ドイツ、フランス、ギリシャなど22か国の信用力が価値の裏付けとなっている、通貨ユーロ。条約で加盟国の放漫財政はあり得ないはずだったが、ギリシャ政府が粉飾を続けていたことが昨年の政権交代でバレた。当然、ユーロは信頼を失い、対円レートは1年で3分の2に下落した。

 ギリシャでは財政赤字で政府が資金ショートに陥ったほか、スペインの銀行は公的管理下に入った。次はイタリアやポルトガルに誘爆していくと恐れられている。「この欧州危機が南米に飛び火すると、世界恐慌になりかねない」と、のっけから大胆なシナリオを披露するのは、経済ジャーナリストの大神田貴文氏だ。

 「ブラジルやアルゼンチンには、植民地時代の名残りで、スペインやポルトガルの資金が流入している。ここで、スペインなど旧宗主国の金融機関が資金を引き揚げれば、南米経済は悪化し、同じく南米に投融資している米国の金融機関の経営問題に直結するだろう」(大神田氏)

 さすがにここまで心配する必要はないだろうが、旧宗主国が南米から資金を引き揚げ始めたら、いち早く逃げたほうが身のためかもしれない。

 ギリシャなど財政難の欧州各国は今後、増税を断行し、政府の「経営再建」に取り組むことになる。「その結果、財政が行き詰まったギリシャなど南欧諸国では、不況が続くだろう」と懸念するのは、農林中金総合研究所の南武志氏。しかも、失業率が20%近いスペインで政府が民間から資金を吸い上げれば、景気回復は遅れる恐れがある。

 「もし仮に、ギリシャやスペインの財政再建が進まず、ユーロ安が止まらないという異常事態になれば、財政困窮国の追放ということが考えられる。ギリシャやスペインを追い出しても、ドイツやフランスが残っている限りユーロ制度は維持でき、欧州全体への影響は小さいですから。可能性は非常に低いが……」(大神田氏)

 最も懸念されるユーロ体制の崩壊はあるのか?

 「ユーロ誕生の根底には、欧州統一への漠然とした憧れがあります。通貨統合は大欧州化への大事な足掛かりなので、ユーロ体制の放棄は考えにくいでしょう」(南氏)

 緊縮財政に増税で、景気回復まで時間はかかるかもしれないが、国家破綻やユーロ崩壊といった過剰な心配は杞憂に終わりそうだ。

 ギリシャの公的債務残高はGDPの1・2倍もあったが、もっとヤバいのが日本だ。何しろ公的債務は約900兆円と、GDPの2倍に迫り、先進国で最悪の水準。

 「麻生内閣末期から財政規律が緩んでいます。しかも、ギリシャ問題以降、過重債務国を見るマーケットの目が変わっています。財政赤字を無限に拡大させないルール作りを急がせなければ、どこかで外国人が『日本は危ない』と言い出しかねません」(南氏)

 参院選が終わると、来年度の予算編成。もう待ったなし、だ。



■南 武志 氏
農林中金総合研究所主任研究員。
国内の景気情勢などに詳しいだけでなく、金融政策、労働問題など幅広く研究する。





■大神田 貴文 氏
経済ジャーナリスト。
専門は金融と経済政策。株式や為替、国債など各市場に明るい一方、個別企業の裏事情も握っている。