不安要素は為替リスクと政治



もちろん、高騰の可能性が高ければ高いほど、暴落の危険性も否定できない。新興国投資の注意点として、山野氏は為替リスクを指摘する。

「新興国の通貨の多くはドルペッグ制を採用しています。つまり通貨の価値がドルに依存しているのです。これから先、ドル安が続くようであれば、新興国の通貨の価値も上がっていかないことになります」(山野氏)

新興国のマーケットは先進国よりずっと小さい。通貨の価値が大きく下落することで、急激な景気の後退が起こる可能性があるのが新興国の怖いところだ。

もう1つの注意点は政情不安だ。

「海外投資家向けのブラジルの金融取引税は、今回が初めてではありません。投資家にとって急に不利なことが続くと、投資に悪影響をもたらしかねません」(鈴木氏)

「タイのタクシン元首相がクーデターによって追放された事件(’06年)によって、いったんはタイから外国資本が一気に離れました。新興国は往々にして政情が不安定で、投資の足を引っ張る恐れがあります」(山野氏)

また、ファンドを利用する場合には、その〝純資産額〞にも留意しておきたい。

「最低でも50億円、できれば100億円以上の純資産を持つファンドを選びたいものです。これより少ないと、繰上げ償還といって強制的に運用が終了してしまうという恐れもあります。繰上げ償還のときが底値だった、などとなっては目も当てられません」(鈴木氏)

ハイリターンはリスクなしでは摑めない。新興国投資の運用資産における割合は、〝多くて3割程度〞を目安に考えておこう。

 投資先としてのロシアの魅力とは


ロシアは昨年、世界金融危機を受け、わずかな期間にニュージーランドのGDPに匹敵する資金が流出。株価もほぼ全銘柄が大幅に下落したが、’09年11月現在、BRIC’sの中でも大躍進。

「弊社が扱う125銘柄のうち、’09年11月17日までの1年間でマイナスだったのは11銘柄のみ。つまり、ロシア株に投資していれば90%以上の確率で儲かったわけです。上位50銘柄に至っては1・6倍〜4・7倍に上げるハイパフォーマンスを記録しています」

こう語るのは、アルジゲート証券社長の二階堂イリーナ氏。同社は日本で唯一、ロシア個別株のオンライン取引を行っている。

「ロシアの主要株価指数MICEXを見ても、’08年9月以前の水準に戻しています。理由は単純で、原油価格の回復が牽引しているからです。MICEXの構成銘柄は7割がエネルギー関連ですから、指数は原油価格を追う形で推移しています」

ロシアのエネルギー銘柄と言えば、ガスプロム、ロスネフチ、ルクオイルが有名。ただ、二階堂氏の推奨は電力株だという。

「過去1年間のパフォーマンス上位10銘柄のうち6銘柄が電力株です。ロシアでは発電能力の拡大が国家的な課題になっているうえ、燃料が安定・安価で供給されるので競争力もあり、中国や北欧への売電収益も伸びています」

また電力に限らず、「ロシア株は買い安さも魅力」だという。現在、パフォーマンス1位のヴォルガ地域電力なら132ルーブル(約400円=100株)、「第4卸売電力」は100ルーブル(約300円=同)から買える。では、中長期的な見通しではどんな銘柄をチェックすべきか。

「手堅いのは、ガス原油生産企業のほか、金生産最大手のポリュスゴールド、チタン世界最大手のアヴィスマ。可能性で選ぶなら農業関連のパヴァとラズグリャイ・グループなどがあります。ロシア南東部の黒土地帯は世界有数の穀倉地帯。地球温暖化で国土の耕作余地が広がり作付け可能品種も増えた。この2社は、中東・アジアへの輸出が急増しています。資源から食料まで、世界のあらゆる需要がロシア企業の発展に繋がるわけです」



二階堂イリーナ氏
ロシア株専門のアルジゲート証券社長。モスクワ生まれ。
東京大学経済学部を卒業、一橋大学大学院でMBAを取得。
日本や外資系金融機関で投資銀行業務、不動産証券化に関する調査・コンサルティングなどの実務を積む。
現在は日本国籍




鈴木雅光氏
証券会社勤務を経て’04年にJOYntを設立。
テレビ・ラジオでの解説、雑誌への寄稿多数。
近著に『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』(すばる舎刊)など



山野浩二氏
アジアンバリュー代表、アジア全般の情勢に詳しい経済・金融ジャーナリスト。
著書に『タイ株入門』『これから本番!ロシア株入門』(ともに情報センター出版局刊)など