吉田 恒
 安倍総理が「円安にはデメリットもある」と言ったり、そうかと思うと黒田日銀総裁は「円安は問題ない」と言ったり。いったい最近の円安は良いのか、悪いのか。日本経済にとって差し引きで見るときっと、「悪い円安」なのではないか。


◆「悪い円安」でも介入できないというのが真相!?



 日本政府が為替市場に「介入」するのはどんな場合か。細かいことを除けば、日本経済にとって「悪い」と判断したときに介入するのだろう。そういう観点からすると、最近の円安は「悪い円安」というのが答えになりそうだ。

 ドル/円の5年移動平均線からの乖離率が9月末からプラス20%を大きく上回ってきた<資料参照>。1990年以降で、同乖離率が±20%以上に拡大したのは3回あったが、すべて為替介入が行われていたのである。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=728872

1009資料
 ちなみに、5年線は9月末現在で89円程度なので、ドル高・円安が111円程度に達すると、5年線からの乖離率はプラス25%程度に一段と拡大する計算になる。同乖離率が±25%以上に拡大したのは、1995年3-6月、1998年5-8月。1995年4月にはG7のドル安「反転」合意、1998年4月には一日で2兆円超もの大規模円買い介入が行われた。

 以上のように見ると、5年線からの乖離率が±20%以上に拡大するドル/円の動きは、企業の対応が困難な「急すぎる為替変動」であり、普通なら為替介入が実施される可能性があるのだろう。

 ましてや、乖離率が±25%以上に拡大する110円を大きく超えるドル高・円安は、これまでの場合なら「スーパー介入」が行われる可能性もある「極端に急すぎる為替変動」ということなのかもしれない。

 以上のように見ると、今回110円前後へドル高・円安が加速するなかで、「早過ぎる円安」への懸念が急拡大してきたのも理解できる。今のところ、金利上昇や株安といった「日本売り」の動きがないことから善悪の評価がマチマチとなっているが、「急すぎる為替変動」の観点からはいつ為替介入があってもおかしくない段階なのではないか。

 そこで改めて政府が介入するのは、日本経済に悪いと判断した場合だろう。最近の動きは過去の実績からすると介入する段階に入っている。ということは「悪い円安」ということになるだろう。

 それでは「悪い円安」だとしたら、なぜ日本政府は介入せず、それどころか「良い面も悪い面もある」といった具合に、当たり前のことを言っているのだろう。「悪い円安」にもかかわらず介入できないというのが「真相」ではないか。たとえば、介入したとたんに大変なことが起こるとか。(了)

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【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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