吉田 恒
 ドル高・円安が1月の記録を超えて、2008年以来の動きになってきました。ではこれはまだまだ続くのか、それとも比較的早く行き詰るのか、今回は購買力平価という分析方法を使って考えてみたいと思います。


◆1996年か2007年か



 1995年、1ドル=100円突破の円高、「超円高」是正が、「異色官僚」、ミスター円の榊原財務省国際局長(当時は大蔵省国際金融局長)に主導されたドル高・円安は、それでもさすがに80円から一気に100円を超えたところでは一息ついた。

 ただ数か月の「中休み」を経て、1996年に入りドル高・円安が再開すると、105円を超える一段のドル高・円安が展開、「榊原円安第2幕」となった。

 一方、2007年、記録的な小動き、「低ボラ」の中で展開したドル高・円安は、年明け早々に一段落した。数か月を経た後、そのドル高値を更新したもののすぐに行き詰ると、いよいよ中期ドル高・円安基調は終了し、中期ドル安・円高基調へ転換した。

 さて、最近も数か月を経て、1月のドル高値を更新する動きになっている。ではこの動きは、上述の2つの例のどちらに近いのか。1996年の「超円高」反転相場に似ているなら、最近の動きは「榊原円安第2幕」に匹敵する「アベノミクス円安第2幕」の可能性がある。それとも2007年に似ているなら「低ボラ円安」のフィナーレなのか。

 1996年と2007年のドル円は、日米生産者物価の購買力平価との関係で決定的な違いがあった。1996年当時、ドルはまだ購買力平価を大きく下回っていたのに対し、2007年は上回っていた<資料参照>。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=713340

0911資料
 この1990年代半ば以降のドル高・円安は、購買力平価をドルが上回ると終わりだった。その意味では、1996年はまだドル高・円安が進む余地があったのに対し、2007年はその余地はすでになかった。この観点からすると、今回は1996年ではなく2007年に近い。そうであれば、「アベノミクス円安第2幕」の可能性は低いという見方になるだろう。

◆1980年代前半か

 ところで、ドル高・円安は、1980年代半ばにかけ、生産者物価の購買力平価をはるかに上回り、消費者物価の購買力平価前後まで進んだことがあった。この消費者物価購買力平価は足元で130円程度だ。では今回は、そんな1980年代のように消費者物価購買力平価を目指すドル高・円安が展開しているのだろうか。

 しかし、1980年代前半はドルを取り巻く環境は極めて特殊だった。石油ショックなどを受けたインフレと戦うため、当時のボルカーFRB議長が主導した異例の高金利政策により、政策金利は2ケタまで上昇した。異例の高金利政策の中で起こった異例のドル高だった。

 今回もFRBは超金融緩和をいよいよ見直し、来年にかけて利上げを始めるとの見方が強まっている。ただそれはゼロ金利政策の見直しを始めるということだ。絶対的にはまだまだ異例の低金利の中で、1980年代に起こった消費者物価の購買力平価に接近する異例のドル高が再現するといった考え方には、普通はならないだろう。(了)

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【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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