吉田 恒

 20日の7月FOMC議事録発表をきっかけに米金利、ドル、米株の「トリプル高」となったが、果たしてこれは持続するのだろうか。米金利とドルが上昇したのは、FRBの初回利上げが予想より早まるとの観測が広がったといった具合に、いわゆる「タカ派」的との評価によるとされる。ではそれでも株高になったのは「ジャクソンホール株高」アノマリーなどの影響だとすると、持続性は微妙ではないか。


◆ジャクソンホール株高のアノマリー



 今回の議事録発表を受けて、米金融政策を織り込むとされる米2年金利は前日より0.05%程度上昇し0.47%と8月1日以来の水準に上昇した。確かに予想より「タカ派」と受け止めたことを示す結果と言えそうだ。

 ところで、予想よりタカ派とされた場合、最近の米株は下落することが多かった。これは、ハト派期待がある意味では異例といえる株高をもたらしてきたためではないか。米株は2011年秋以降、1割以上の大幅反落なき続伸が展開してきた。その中で、たとえばS&PのPER(株価収益率)は2010年以来の最高水準まで上昇、つまり割高懸念もあるわけだ。

 にもかかわらず20日、米株高となったのはなぜか。21日から市場関係者が注目するジャクソンホール・シンポジウムが予定されているが、その影響もあったのではないか。過去7年のジャクソンホールでのFRB議長基調講演は総じて株高のきっかけとなり、2007-2012年の議長講演の日のS&Pは平均で1%以上と比較的大幅な上昇となっていた。

 ではこの「ジャクソンホール株高」アノマリーは、今年もFRBタカ派転換との見方の中でも機能するのか。たとえば、「恐怖指数」VIX指数は、20日に11.7ポイントまで低下した<資料参照>。経験的には株を選好するリスクオンの限界圏にあるが、それに加えて「タカ派」への転換思惑の中でも、「ジャクソンホール株高」期待は通用するのか。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=701810

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 ちなみに、例年ジャクソンホール・シンポが開かれる8月20日頃のVIX指数を2007-2012年で調べたところ14-43ポイントだった。14ポイント台だったのは2012年で、それを除くとすべて20ポイント以上だった。このように見ると、「ジャクソンホール株高」になったのは、リスクオフ・ムードの中でのFRB議長発言がそれを緩和させるきっかけだったのではないか。

 この観点からすると、今年のジャクソンホール・シンポを迎える状況は、「ジャクソンホール株高」とはある意味で正反対だ。むしろ、昨年以降で代表的なFRBタカ派発言とされる2012年5月、バーナンキ発言当時に近いだろう。

 昨年5月のバーナンキFRB議長(当時)による金融緩和見直し示唆発言は、その後、株安、新興国市場の下落などリスクオフへ転換するきっかけになった。当時のVIX指数は12ポイント前後とリスクオン限界圏にあったので、その反動が広がるきっかけになったということではないか。

 さて、22日に予定されているイエレン議長初めてのジャクソンホール講演が注目されている。代表的なハト派とされるイエレン議長は、やはり「ジャクソンホール株高」のきっかけになるのか。

 ただ、VIX指数は「ジャクソンホール株高」が起こってきた水準ではなく、むしろ昨年5月の「バーナンキ・ショック」当時のほうに近い。これを見る限り、むしろ22日のジャクソンホール講演は、「イエレン・ショック」になってもおかしくないのかもしれない。少なくとも、20日の「FRBトリプル高」が持続するかの分岐点になりそうだ。(了)

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【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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