これまで最少で1円単位だった東証の刻み幅が10銭単位になった。「投資家の取引コスト軽減のため」のようだが……実は、個人投資家にはマイナスでしかなかった!? 闇株新聞氏がその構図を分析する。


◆刻み値幅を最小10銭にした東証の愚策で個人投資家は不利に

(ブログ&有料メルマガ管理人「闇株新聞」氏)

東証
 東京証券取引所は7月22日から時価総額と売買量の大きなTOPIX100採用銘柄の株価刻み幅を大幅に縮小した。従来は株価5000円以下の刻み幅は1円だったが、これを1000円以下なら10銭、1000円超~5000円以下なら50銭とした。約80銘柄が対象で、株価が5000円以上の銘柄は本年1月にすでに縮小されているため今回は第2弾となる。

 東証は「円滑な株価形成」や「取引コストの軽減」が期待できると説明しているが、まったく意味不明でピントの外れた愚策である。東証自身のシステム変更費用などのコスト増は証券会社を通じて投資家が負担し、証券会社や情報サービス機関にも同様のコスト増は発生し、結局、恩恵を受けるのは外国籍の超高速取引業者(HFT)だけである。

 HFTの取引手法とは、例えば機関投資家を含む一般投資家の買い注文が市場に届く寸前に先回りして最も安い売り板を買ってしまい、一瞬遅れて来た一般投資家の買い注文に高い価格で売り注文をぶつけて瞬時(1000分の1秒かそれ以下)に利益を確保する。つまり一般投資家から収益を掠め取っているだけであり、今回の東証の措置はこのHFT(High Frequency Trading)の収益チャンスをさらに何倍にも膨らませる。

 日本にはすでにKCG、バーチュ、サントレーディング、クォンツラボ、ハドソンリバートレーディング、サスケハナなど外国籍HFTが大挙して上陸しており、東証の出来高の6割、売買代金の4割を占めている。今でもこの「化け物」のようなHFTがウヨウヨしているが、今回の措置で化け物が数倍に増殖する可能性は非常に高い。

 HFTといえば、本年4月にマイケル・ルイス著の『フラッシュボーイズ』で取り上げられて米国では批判が集中し、米当局も不正取引であると重大な関心を寄せている。早晩、米国など「常識ある国の市場」から締め出されるはずで、「常識のない東証」にもっと集まってくることになる。

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【選者】「闇株新聞」氏
闇株新聞'10年にブログ「闇株新聞」(http://yamikabu.blog136.fc2.com/)を創刊。管理人は大手証券においてトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった経験を生かして記事を執筆。特に'11年10月の「オリンパス事件」と'12年3月の「AIJ投資顧問事件」で専門家もうなる詳細記事をアップして話題に。'12年から有料メルマガ「闇株新聞プレミアム」(月額2600円)を開始。『闇株新聞 the book』も発売中