5月8日のドラギECB総裁発言などをきっかけに、ユーロ安が広がっています。これは、2012年7月、やはり「ドラギ発言」をきっかけに始まった1.2ドル、95円からのユーロ高の「逆コース」の始まりの可能性はないでしょうか。


◆「絶望のユーロ」反転劇との類似性



吉田 恒 現在に至るユーロ高の始まりは、2012年7月下旬、ドラギECB総裁による「ユーロを守るために何でもやる」発言からでした。

 ただ、当初それを信じる人は一般的にはまったく少なかったと思います。ユーロを守るためすぐにできることがあるという見方は懐疑的に受け止められ、そもそもユーロを守ることはすぐには難しいとの見方が一般的でした。「絶望のユーロ」です。

 これに対して、ドラギ総裁が提示したユーロ危機対策は、OMT、アウトライト・マネタリー・トランザクションでした。簡単な言い方をすると、債務不安の国が財政再建など一定の条件を満たした上で申請したなら、当該国の国債をECBが実質的に無制限で購入するというものでした。

 今から振り返って、私がとくに印象深いのは、このドラギ発言直前まで、一般的には「ユーロを守るためにすぐにできることはまずない」といった見方だったのに対し、「あったじゃないか」ということでした。

 それ以上に印象深かったのは、そんなユーロ危機対策は、結果的には使わなかったということです。対策を使わなくても、ユーロ高となり、欧州不安も後退し、ユーロ危機が沈静化に向かったことから、対策を使う必要がなかったということです。

 それにしても、「ない」と思っていた対策がじつは「あり」、そんな対策を使わなくても問題が解決に向かったということはどういうことなのでしょうか。そもそも「絶望のユーロ」ということが一種の「バブル」、行き過ぎた悲観論、行き過ぎたユーロ売り、行き過ぎた欧州周辺国の債券売りということになるのではないでしょうか。

 さて、そんな2年前のドラギ発言で、1.2ドルから上昇したユーロは1.4ドル程度までユーロ高となり、95円のユーロ円は140円を超えるユーロ高となりました。これは、ECBの金融緩和姿勢が弱いためであり、すぐには難しいだろう「ECB版QE(量的緩和)」でもやらない限り変わらないとの見方が一般的でしょう。

 そういったなかで、先週の「ドラギ発言」からユーロ安に少し動くところとなっています。それでもやはり、「ECB版QE」でもやらないと、またすぐにユーロ高に戻るのでしょうか。2年前とは逆の方向性ながら、後から振り返ったら、「ない」と思っていたユーロ高対策がじつは「あり」、さらにそれを使わなくてもユーロ安にならないでしょうか。

 2年前の「絶望のユーロ」の反転劇を思い出しながら、今回もそんな皮肉な思いが頭を過ったりしますが、果たして?(了)

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【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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