アジアの経済の中心地が東京であったのは、今となっては昔のこと。現在、世界中の大富豪たちや金融関係者が、もっとも注目する都市はシンガポールにほかならない。人も情報も集まる最先端の地では、いったい何が投資や蓄財のトピックとなっているのだろうか? 現地に身を置く有識者たちに最新の投資動向を聞いた


 富裕層と交流を持ち、彼らの資産運用のサポートを行ってきた石田氏に、シンガポールの富裕層はどのような投資哲学を持っているのか聞いてみた。
 「基本的に自分が全然知らないことや足を踏み入れたこともない国の金融商品は買わないほうがいい。そのため、投資対象は自分たちの目で見て手で触れて確かめるのが彼らのリテラシーだと思います」

 実際、富裕層はフットワークが軽い。

 「ジム・ロジャースがいい例ですよね。彼は冒険投資家と呼ばれ、自分の足で世界を回り、投資のチャンスを見つけ出してきました。この前、中国の一大レジャー産業のドンである超富裕層の人物がシンガポールへの資産移動の相談をされたのですが、彼なんかも、私を含めて実際にシンガポールで投資をやっている人と直接面談するためにわざわざやってきたわけです」

 また、富裕層は現地に行ってみる視点もひと味違うと言う。

 「現地のガイド役は、基本的にキレイなところしか案内したがらない。でも富裕層の人たちは、そこから離れて自分で下町を見に行きます。その国の底がどこにあるのか、確かめるんです」

 そういう石田氏も、初めての国に行ったから必ず現地のスーパーやコンビニに行くという。

 「私も現地の消費行動を知るために、スーパーやコンビニには必ず行くようにしています。現地の人がどんな生活をしているか手っとり早く知ることができる」

 さらに富裕層は、人から直接得る情報を非常に重視している。

 「何か新しい投資をしようと思うときは、まずその先駆者に会いにいきます。不動産投資をするなら実際にやっている人に、海外投資をするならその国で長年投資している人のところに足を運びます。富裕層はそもそも会う人のレベルが一般人の及ばないところにありますが、その姿勢は見習うべきです」
 一般人がそうした人とコンタクトをとる方法はあるのだろうか?

 「私の場合、まず先駆者としてどんな人がいるかをリストアップします。それと自分の人脈を並べ、『彼ならこの人を紹介してもらえるんじゃないか?』というルートを見つけ出します。紹介もなしにいきなりコンタクトをとることはありません。当然、警戒されますから。富裕層と我々の大きな違いは資産の額だけではなく、そうした人脈の広さと深さだと思います」

 人脈がないという人は、まずはそこを広げることから始めよう。

 「普段から積極的にいろんな場に参加して交友関係をつくります。例えば、ワールドインベスターズのイベントに参加するだけで、海外投資の専門家と知り合うチャンスができます。そこで知り合った人が今度海外に視察に行くと言うなら『僕も連れていってください!』と頼んでみればいいんです。運良く連れていってもらえたら、一気に人脈が広がりますよ」

 要はいかに“上のクラス”のコミュニティに参加するのかが重要だと言う。
 「多少無理してでも、ハッタリをカマしてでも入っていくんです。そういう努力もせず、雑誌で読んだ知識だけで儲けようなんて甘い発想を持ってはダメですよ」
 富裕層の投資を真似るには、まず彼らのコミュニティに近づくのが第一歩だということのようだ。

投資の鉄則3箇条
1: どんな投資でも、必ず現場に足を運び自分の目で見て確かめるべし
2: 初めての国に行ったときはその国の底辺の生活を見に行くべし
3: 投資の先駆者に会って話を聞き直接生の情報を仕入れるべし


富裕層たちのところだけに集まる耳慣れないユニークな投資先
 取材を進めるうちに、シンガポールの富裕層の間で、ひそかに話題になっている投資情報が耳に入ってきたので紹介しよう。一つはユーロ圏の文化財ファンド。

 政府が売りに出している重要文化財の建物を共同購入し、当該国の高所得者層に売却するファンド。半年くらいの短期投資で、平均利回りが年12%程度あるそうです」(某海外投資家)

 思わず手を出したくなる魅力的な高利回りだが、そもそもの利益の源泉はどこなのだろうか......。もう一つはイギリスの訴訟ファンド。

 弁護士から見てどう見ても勝てる案件なのに、お金がないから提訴できない人がいます。そこに出資して裁判を起こし、慰謝料の一部をファンドに分配する仕組み。法律事務所が組んでいるファンドらしいです」(同)

 どちらも興味深い商品だが、正確な情報があるわけではないので、リスク承知で手を出すなら自己責任で!

 「ユニークな情報や投資利回りのいい魅力的な商品というのは、そのからくりを知って納得することが大事です。そのためにも情報やデータは多方向から入手し、自分自身で検証しなければいけません」(前出の石田氏)

 投資情報は、伝える側のフィルター次第でどうにでも変わるもの。伝える人がどの立場の人かをよく見て、多方面から分析することが大事だ。




石田秀明石田秀明氏
税理士。現在は、シンガポールを拠点に企業 の海外進出や国際金融投資のサポートを行っ ている(http://www.global-finance.biz/)