吉田 恒 アルゼンチン通貨の暴落、「アルゼンチン・ショック」などをきっかけに、新興国市場が混乱、「新興国発リスクオフ」が先週から広がりました。これに対して、今週はトルコなど新興国側が通貨防衛に動いています。では、「新興国発リスクオフ」は今後どうなるかについて、今回は考えてみたいと思います。


◆昨年の新興国不安歯止め役は「インドのラジャン」



 新興国市場混乱は、昨年夏から秋にかけても起こりました。インド、インドネシアなどで通貨、株式市場が急落、そして経常赤字で外国からの資本流入への依存の高い新興国が売りの標的のようになったわけです。ただこれに歯止めをかける主役の役割になったのがインド、そしてキーマンはインド中銀の新総裁、ラジャンでした。

 元IMFチーフエコノミストのラジャンは、昨年9月初めにインド中銀新総裁に就任すると、9月下旬、10月下旬と2か月連続で大胆な引き締め策を決定、インドルピー防衛に成功するところとなりました。結果的には、これが当時の新興国市場混乱が一段落に向かうきっかけになったのです。

 今年に入り、アルゼンチン・ショックなどをきっかけに、新興国市場混乱再燃となり、それが世界的な株価急落など、リスクオフを主導する展開になりました。背景には、昨年12月から米緩和縮小が始まり、経常赤字で外国資本流入への依存度の高い新興国から、資金流出懸念が強いということがあります。

 そういったなかで、新興国側は昨秋と同様に通貨防衛策に動き始めました。特にトルコは28日、事前予想を上回る超引締め政策を決定。これを受けて、29日のアジア市場では新興国市場混乱の一段落期待で、リスクオン、株高、円安へ振れる展開となりました。

 ただ、昨年秋のインドと、今回のトルコなどでは違いもあるとの見方があります。このため、今回の場合はこのまま新興国市場混乱が一段落になるかはまだ微妙との見方もあります。インドとトルコの違いとは、経常収支対策です。

◆インドとトルコの違いは経常赤字対策

 昨年のインドは、9月初めに「IMFから来た男」、ラジャンがルピー防衛の引き締め策に動く前から、金輸入制限策を行っていました。インドは「世界最大の金輸入国」であり、インドの輸入において金は原油に次いで第2位です。その輸入制限は、もちろん経常赤字対策です。

 新興国市場混乱の根底には、経常赤字の結果、外国資本の流入への依存が高いことへの懸念があります。昨年のインドは、金輸入制限により、経常赤字対策を行ったことが、通貨ルピー防衛の「影の主役」との見方があるわけです。

 このインドの金輸入制限に当たるような経常赤字対策の切り札が、トルコにはないと見られています。そうであれば通貨防衛策は引き締め策に頼らざるをえなくなります。今回、トルコが上述のように超引締め策を決定したのも理解できるところです。

 問題は、そんな「乱暴な利上げ」に株式市場が耐えられるかということでしょう。「乱暴な利上げ」が新興国市場混乱を一段落させ、世界的にリスクオン再開をもたらすことになるか。簡単なことではなさそうです。 (了)

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【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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