吉田 恒氏 ドルはアベノミクスを合言葉に、今年5月末まで過去最高記録を更新する8か月連続陽線引けとなってから一服、方向感のない一進一退が続いてきましたが、年末になりその5月末ドル高値を更新し「円安第2幕」に入りました。ただ、過去のパターンを参考にすると、「2幕」が「1幕」のように一気に数か月続くドル一段高になるかは別のようです。今回は、そのような観点を中心に、為替相場の2013年回顧と、2014年の展望について、述べてみたいと思います。


◆アベノミクスで記録更新になった2013年の円安相場


 今回ほどではないですが、7か月連続でドルが陽線引けになったのは、1995年7月から1996年1月にかけての局面、そして2000年9月から2001年3月にかけての局面でした。この2つの局面では、一直線のドル高が一服した後、前者は4か月後、後者は9か月後に、それぞれドルは月末終値高値を完全に更新するところとなりました。

 ただ、ともに2か月連続で月末終値ドル高値更新となったところで一段落。その意味では、再開した新たなドル高・円安、つまり「円安2幕」は、必ずしも「1幕」のように8か月連続でドル陽線になったような、いわば一直線の展開とはちょっと違っていたわけです。

 さて、年末からドルは5月の高値を更新し、新たなドル高・円安、「円安2幕」が始まった感じになってきました。ただ過去の似たようなパターンを参考にすると、それが「1幕」ほど一気に一直線に進む動きになるかというと、今述べたようにちょっと微妙かもしれないわけです。

 では、なぜ円安第2幕は、第1幕の一直線の展開とは違ってくるのか。いくつか理由はあるでしょうが、今回の場合なら、そもそもこの先のドル高・円安は、第1幕ほどは簡単なものではないということがあるのではないでしょうか。

 ではそれは具体的にどういうことなのか。ドルは、足元で105円程度まで上昇しましたが、たとえば2007年には120円を超えるドル高になったことを考えるとまだまだドル安です。でも、そろそろドル高・円安が簡単ではなくなるということは、こんな考え方が参考になるでしょう。例えば、購買力平価との関係でみると、実は足元105円程度で、すでに2007年6月の124円に匹敵するドル高・円安と言えそうなのです。

 少なくとも、1980年代後半以降で、日米の生産者物価で計算した購買力平価を最もドルが上回ったのがこの2007年6月でした。当時この購買力平価は110円程度だったのに対し、ドルは最高で124円まで上昇しました。つまり購買力平価を12%以上も上回ったわけです。

 さて、この購買力平価は10月末で93.5円程度。したがって、現局面105円をドルが上回ってくると、購買力平価からの上ぶれ率はまさに12%以上に拡大する計算になり、上述の2007年6月に肩を並べ、1980年代後半以降で最大の上ぶれ率になるわけです。

 ちなみに、ドルは1990年には160円まで、また1998年にも147円まで上昇しました。ただ前者は、生産者物価の購買力平価に届かず、後者も7%程度上回ったに過ぎなかったのです。

 経済環境が変わる中で、ドル円も名目レートでの比較には無理があります。これまで見てきたように、購買力平価との関係からすると、1980年代後半以降の「最大のドル高」は2007年6月の124円であり、そして当面において105円を超えると、そんな「最大のドル高」に肩を並べる意味になりそうだということなのです。

 日本の貿易赤字国化などに象徴される日米の経済構造の変化により、今回のドル高・円安は、購買力平価との関係で見ても、最終的には1980年代後半以降の「最大のドル高」を更新する、つまり、名目レートは105円より大きくドル高・円安に向かう可能性がありそうだと私は考えています。ただそれが、この数か月で一気に起こるほど簡単かは疑問です。

 これまでの感覚からすると、中期的なドル高・円安はすでに終わりに近いでしょう。要するに、105円を超えるドル高・円安第2幕はほとんど「未踏の領域」を進む動きということになりそうです。そんな第2幕は、第1幕ほど一方的な展開にはならない、ちょっと上昇と反落が激しくなるといったイメージをもっておく必要があるのではないでしょうか。 (了)

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【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。