デフレ脱却を最優先課題として掲げた安倍政権。消費者物価指数などを見ると確かに物価は上昇している。しかし、狙いとは違った形で……。


◆給料は上がらないのに円安と原発停止による電気代やガソリン代の値上がり。来年は消費税も上がる

(人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏)

藤沢数希氏 '13年の日本経済はなんといっても「アベノミクス」であろう。アベノミクスは第一の矢の大胆な金融緩和、第二の矢の機動的な財政政策、第三の矢の成長戦略を基本方針とするが、第二の矢は伝統的な自民党のバラマキ公共事業のことで、第三の矢の成長戦略は、世界が注目するなかで行われた安倍首相の6月のスピーチで、出てきた具体案が一般大衆薬のネット販売解禁だけで期待はずれに終わり、さらにその薬のネット販売ですら、後からさまざまな条件が付け加えられてしまった。よって、アベノミクスで新しかったのは、第一の矢の大胆な金融緩和だけである。

 安倍首相は'12年の暮れ頃からリフレ政策を実行することを宣言しており、それは実際に白川氏に代わり日銀総裁になった黒田氏による異例の規模の量的緩和により実行された。通称黒田バズーカ、異次元の金融緩和である。

 リフレというのは、日銀が大量にお札を刷り続ければ、長らく物価が停滞し続けたデフレが終わり、景気が上向くはずだと主張する経済政策である。金融緩和は通常は短期金利の引き下げによって行われる。しかし、日本は短期金利がゼロに張りついてしまっていて、これ以上の金融緩和が難しかった。ゼロ金利になった後でも、日銀が銀行から国債をさらに大量に買うなりして、民間の銀行にどんどん現金を注入していけば、もっと金融緩和できるだろうというのが量的緩和だ。リフレ派は、白川総裁時代の量的緩和は全く不十分で、日銀がさらに国債などの金融商品を買いまくれば、物価が上昇に転じて、日本経済が好転すると主張してきた。それに安倍首相が乗っかることになった。

 実際に、黒田日銀総裁は、'13年4月に驚くほどの規模の量的緩和を宣言した。それまで130兆円ほどだった日銀の通貨供給量を2年間で2倍の270兆円に引き上げ、物価上昇率を(消費税増税分を含まず)年2%まで引き上げると言ったのだ。

⇒【後編】『給料は上がらないのに物価だけ上がる?』に続く
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【藤沢数希氏】
欧米の研究機関にて博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。ブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは8万人を超える。最新刊『外資系金融の終わり』が発売中