吉田 恒 世界一の超大国、米国のデフォルト騒動。そもそもこの10月は、記憶に残る金融市場の大混乱が起こることが多かっただけに、今回の場合も気になるところではあります。


◆為替の「暗黒の10月」は2008年と1998年



「暗黒の10月」で、まず浮かぶのは、やはり1987年10月19日、米国発世界同時株暴落となった「ブラックマンデー」、また世界恐慌の引き金を引いた形となった「ブラックサースデー」、1929年10月24日のNY株大暴落でしょう。

 そんなに大昔までさかのぼらなくても、近年の「暗黒の10月」は、やはり2008年ではないでしょうか。この年は9月15日、リーマンショックが有名ですが、ただリーマンショックですぐに金融市場が大混乱に陥ったということではなく、むしろ混乱は10月に入ってからだったのです。

 2008年の「暗黒の10月」の幕を上げる役目を担う形になったのは、9月末の「米下院ショック」でした。当時金融安定化法案の採決をしていた下院が、まさかの否決という結果となると、NYダウは777ドルという史上最大の下げ幅を記録し、これをきっかけに世界的に株価暴落局面が広がるところとなったのです。

 金融市場の大混乱は、次第に為替市場にも波及し、とりわけ10月24日のドル円は98円台から一気に90円割れに迫る記録的大暴落となりました。ちなみに、当時のCFTC統計の円のポジションを、「投資判断インディケーター」で確認してみると、9月末時点で4万枚程度の買い越しでした。つまり、すでにドル売り・円買いに傾斜していたわけですが、それでもドル大暴落になったわけです。

 そんな2008年10月を上回るドル大暴落、「史上最悪の相場」が展開したのは1998年10月でした。10月上旬、たった3営業日で、ドルは135円程度から110円割れ寸前まで約25円もの大暴落となりました。

 皆さんは、一日で10円のドル暴落、3日で25円のドル大暴落という値動きを想像できるでしょうか。なかなか簡単に想像できないような、ドル円にとっての「暗黒の10月」となったのが1998年だったのです。

 この1998年10月当時の円のポジションも、投資判断インディケーターで期間設定を変更すると詳細に数字が確認できますが、10月初めの段階で円のポジションはほぼニュートラルでした。とくに大きくドル買い・円売りに傾斜したわけではなかったのですが、ドル売り・円買い殺到でドル大暴落が起こったのです。

 その主役は、ある大手ヘッジファンドという見方が有力でした。つまりこのヘッジファンドが膨大なドル買い・円売りを抱えたままになっており、ドルが急落する過程で、このヘッジファンドのドル投げ売りが入るとの思惑から、「史上最悪のドル暴落」が起こったわけです。

 ちなみに、2008年10月の場合も、さっき確認したように、CFTC統計の円ポジションはすでに買い越しに転換していたわけですが、ドル暴落ではやはり投げ売りが殺到しました。このケースでの主役の一角は日本の個人投資家でもあったと見られています。

 今回の米デフォルト騒動も、そんな「不吉の10月」というタイミングで展開しているというのは、思えばあまり気持ちの良いことではないでしょう。(了)

【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。