吉田 恒「クロダは96円割れの円高も静観するシグナルなのか」、4日の黒田日銀総裁の記者会見を、そんなふうに受け止めた海外の専門家が少なからずいたようだ。そして彼らは、米財政問題への懸念と合わせ、顧客向けに「ドル売り推奨」の見通しを連絡したようだが、さてそれは吉と出るか否か。


◆4日黒田会見が注目された理由



 4日の日銀・黒田総裁の記者会見を受けて、海外投機筋など一部で短期円高シナリオのイメージが広がったようだ。4月4日のいわゆる「黒田緩和」以降、一気に96円を超えるドル高・円安となった。そんな「黒田緩和」以前のドル安・円高水準に後戻りしつつある中でも、今回の黒田総裁の発言から、円高への懸念や、追加緩和前倒しなどの示唆は全くなかったからだ。

 4月4日の「異次元の緩和」を受けて、ドル高・円安は一気に96円を超える動きになった。以来、96円よりドル安・円高になったのは、6月中旬などほんの数日しかなかった。結果的には、96円は黒田緩和以降の円高と円安の境界線のようになってきたわけだ。

日銀 4日の日銀会合、そしてその後の黒田総裁による記者会見は、そんな境界線、96円台までドル安・円高に戻ってきた中で行われた。このため一部の市場関係者の間では、円相場に対する黒田総裁の姿勢を吟味するべく、密かに注目されていた。

 一部で注目されていたのは、追加緩和の前倒し示唆があるかということだった。最近の黒田総裁は、「消費増税で予想外に景気が減速すれば、追加緩和を躊躇しない」という表現を原則として使っており、これは消費増税後、来年5月以降の追加緩和見通しと受け止められていた。

 直接的な円高懸念はないにしても、この追加緩和を、増税の事前に行うことを示唆するようなら、それは暗に「境界線」を超えて95円よりドル安・円高に戻る動きの回避を意図している可能性があった。

 しかしそういった発言がなかったどころか、むしろ消費税率引き上げに伴う5兆円の経済対策については、「かなりの成長率のプラス要因」と評価する発言があった。こういったことを、海外投機筋などの一部は、95円よりドル安・円高に戻る動きが起こっても静観する暗示と受け止めたようだ。

 週末には、複数の米系金融機関などからドル円の売り推奨レポートが出たとされるが、この背景には、「黒田会見」を受けた判断もあったようだ。(了)

【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。