吉田 恒氏 FRB超金融緩和見直しをきっかけにインドなど一部新興国市場が混乱しました。これが限定的にとどまるか、それとも一段のリスク回避本格化に向かい、ひいては米金融政策方針変更の可能性すら浮上させる一つのカギは資産運用巨額損失の有無でしょう。


◆1998年LTCMショックが教える教訓とは?


 1998年8月にロシア・ルーブル・ショックが発生しました。これはその後、世界的な新興市場危機、リスク回避のきっかけになったのですが、その「つなぎ役」になったのが「LTCMショック」でした。

 二人のノーベル経済学賞授賞者によって主催された「不敗のヘッジファンド」、LTCMがこのルーブル・ショックなどにより巨額損失を発生させていたことが明らかになるに従い、この問題は金融危機に発展し、損失穴埋めのための資金の引き揚げが加速、ブラジルなど中南米の新興国市場危機へ連鎖は急拡大したのです。

 こういった中で、当時グリーンスパンFRB議長によって率いられたFRBは、9月から11月にかけて3か月連続で利下げを行いました。当時は2000年春から始まるITバブル破裂前夜のタイミングでもあったわけで、FRBにとって緊急緩和は想定外で、むしろ金融引き締めを意識していたことでしょう。ある相場の急落がきっかけで、巨額損失が発生し、それが連鎖的なリスク回避に発展すると、FRBも「豹変」を余儀なくされたわけです。

 この1998年の教訓は、ある相場の急落が、あくまで限定的影響にとどまるか、そうではなく連鎖的に拡大するかの一つの鍵は、その相場急落による巨額損失発生の有無が握っているということでしょう。仮に巨額損失が発生していると、その穴埋めのため他の相場を売却することで、相場の急落が連鎖的に広がる可能性が出てくるわけです。

 これを最近に当てはめると、この数か月の目立った相場の急落は、欧米などの債券相場であり、そして上述のように一部新興国市場の為替相場。これらの相場の多くは、過去数年スパンで大幅な上昇となっていたものであり、それが一転急落に向かったことで、いわゆる「逃げ遅れ」で損失が発生することは考えられなくありません。

 そんな金融市場の混乱が連鎖的に拡大するきっかけになりかねない巨額損失発生の有無は、FRBも最新の注意を払って見守っているのではないでしょうか。巨額損失発生なら、超金融緩和見直しを中断する可能性が出てくるが、その兆しがなければ見直しを粛々と進めるということでしょう。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。

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