吉田 恒氏 インドなどで「トリプル安」となり、米金融緩和見直し局面に起こりがちな「エマージング危機」の始まりが懸念されてきました。これは、逆に米金融政策変更の「障害」になる可能性も実はありそうなのです。


◆早々と実現した近未来シナリオ「エマージング危機」


 米金融政策転換局面では、「エマージング危機」が起こる懸念があるということは、以前書いた近未来シナリオ「来年以降の日本と世界はもっとドラマティックになる」の中でも取り上げましたが、早速それが現実になってきたようです。今回述べるのは、それはまるでブーメランのように、米金融政策へも影響が跳ね返る可能性があるということです。

 要するに、「エマージング危機」拡大次第では、当該エマージング諸国が保有している米国債売却を拡大する懸念もあり、最悪の場合、FRBが金融緩和見直しを中断し、逆に金融緩和強化に転換せざるをえなくなる可能性も一部で注目されています。

 例えば、6月12日付けロイター報道「新興市場国通貨の動揺深刻化なら、FRB出口戦略に支障」という記事では、専門家の以下のような見方を紹介していました。

 バンク・オブ・ニューヨーク・メロンのストラテジストのサイモン・デリック氏は「過去の多くの新興市場国危機と同じように、資金撤退の引き金を引くのは多くの場合FRBだが、その結果として債務不履行が発生してFRBは追加的な緩和を余儀なくされる」と述べた。

 これまでFRBが超金融緩和を展開する中で、高い利回りの新興国、資源国に投機マネーが大量に流入し、過剰な通貨高となりました。これを新興国側が痛烈に批判した言葉が「通貨戦争」だったわけです。

 この「通貨戦争」の中で、過剰な通貨高を阻止するべく、新興国側は自国通貨売り、米ドル買い介入を行い、購入した米ドルを米国債で運用する形をとったと見られています。この結果、新興国側は大量の米国債を保有しており、「エマージング危機」で自国通貨防衛の必要が出てくると、一転して米国債を売却し、米ドル売り介入を拡大する可能性があり、それはFRBの金融政策に影響しかねないということです。

 9月以降、G20など先進国と新興国がともに会する国際会議も予定されているが、それらをにらみながら、エマージング危機が拡大するようなら、QE縮小、9月から開始といった米金融緩和見直し計画にも大きく影響する可能性がありそうですから、注目です。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。

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