吉田 恒氏 消費増税の一方で法人減税を検討する動きになり、それを好感したとして一時は株高、円安になる場面もあった。ただこれが実現するかとなると、まだ紆余曲折があるのではないか。


◆参院選前、成長戦略から外した法人減税のリスク


 そもそも、法人減税をやるなら、6月に政府が成長戦略を決定した際に盛り込んでいただろう。それをやらなかったのは、7月参院選挙前に、法人減税を打ち出すことにはリスクがあり、それをあえておかさなかったということだろう。

 法人減税を打ち出すことの最大のリスクは、「庶民は増税(消費増税)、企業は減税(法人減税)か」といった批判だろう。そして、財政再建のために消費増税する中で、法人減税するなら、その財源はどうするかといった問題もある。

 こういった法人減税を巡る「問題」が、7月参院選挙を通過したことで、すべてクリアされたということなのだろうか。もしも、まだ法人減税を巡り紆余曲折あるなら、それは法人減税報道を好感したとされるアベノミクス期待相場の再燃、株高、円安の動きを揺り動かす可能性もありそうなだけに、注目される。


◆参院選大勝を受けて再燃する自民党内対立


 そんな法人減税は、実際にその後「迷走」したようになっているが、この裏にはかつての「上げ潮派vs財政再建派」という自民党内の対立再燃ということが一つあるのだろう。

「上げ潮派」の最大の主張こそは、経済成長優先、消費税引き上げ先送り。その上げ潮派は、代表格の中川秀直氏が第一次安倍政権で自民党幹事長に就任するなど、かつて強い影響力を発揮した。

 そんな中川元幹事長は2012年12月に政界を引退したが、一部報道によると、今月14日、その中川氏と安倍総理は会食したという。報道によると、消費税率引き上げの判断について、中川氏が「僕には僕の意見があるが、どんな決断をしても最終的に判断したことを応援する」と伝えたところ、首相は「それが最大の問題だ」と応じたという(8月15日付け日経新聞)。

 この法人減税について、主要閣僚から反対意見が一気に噴き出し、株安、円高へマーケットが急反転したのが15日。要するに、「安倍-中川会談」の翌日だった。その主役の一人で、法人減税の効果に懐疑的な見方を示したのが麻生財務相だったが、この麻生氏こそ「財政再建派」の代表格だ。

 以上のように見ると、消費税反対の「上げ潮派」が譲歩案としているのが法人減税検討であり、それに対して「財政再建派」が反対している構図のようだ。要するに、消費税引き上げが近付く中で、上げ潮派vs財政再建派という自民党内路線対立再燃ということが一つありそうだ。

 このように、党内対立が表面化しそうになってきたのは、参院選挙大勝による「自信」、「驕り」などの影響もありそうだ。このように党内路線対立再燃となり始めていることを考えると、根は浅くないのかもしれない。まだまだ一波乱、二波乱あってもおかしくないのではないか。 (了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。