吉田 恒氏 来年からの消費税増税について最終決断のタイミングが迫る中で、為替や株式相場で材料視されるケースが出てきました。そこで今回は、消費税と為替相場の関係を考えるといった意味で、「消費増税で今回も30円もの大幅円安になるのか」というテーマで書いてみたいと思います。

 結論的にいうと、消費税増税はインフレ率の上昇を通じ中期的には大幅な円安要因であり、その一方で増税実施前は、いわゆる「駆け込み需要」が金利上昇をもたらすことで円高要因となりやすいことが、過去の経験からも確認されているところです。


◆キーワードは「駆け込み需要」とインフレ率上昇


 最初に消費税が3%で導入されたのは1989年です。そしてそれが5%に引き上げられたのは1997年でした。

 1989年の消費税導入から翌1990年にかけてドル/円は130円程度から160円程度まで約30円の大幅な円安となりました。また、1997年に消費税が引き上げられると、ドル円はその後の約1年半で120円から150円近くまで、やはり約30円もの大幅円安となったのです(<資料>参照)。では、なぜこのように過去2回の消費税増税後は大幅円安となったのでしょうか。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=492744
<資料>


 過去2回の消費税引き上げ後に共通した一つはインフレ率の上昇です。消費税増税で物価が上昇するのはとてもわかりやすいと思いますが、このようにモノの価値が上がることで、相対的に通貨の価値が低下する、つまり円安になったというのが基本的な理解となるでしょう。

 また、インフレ率の上昇により、名目の金利からインフレ率を引いた実質金利は低下します。このように実質金利低下を受けて、円安になったと考えるのも理解しやすいところでしょう。

 一方で、過去2回の消費税引き上げでは、増税が実施される前まで円高になっていました。例えば、1989年4月の消費税導入の際は、その3か月前まで円高となっていました。これは、消費税引き上げ前のいわゆる「駆け込み需要」が金利上昇をもたらした影響があったと考えられます。

 その意味では、今回の場合も、すでに史上最低水準まで低下している日本の金利をさらに低下させることで円安を実現することより、むしろそのような「駆け込み需要」などによる金利上昇を阻止することこそが、日銀に期待されることではないでしょうか。

 今回も消費税増税が具体化される中では、それが30円といった大幅なものになるかはともかく、インフレ率の上昇がある程度の円安要因になる可能性は頭に入れておく必要がありそうです。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。

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