吉田 恒氏 米国を中心とした世界的な金利上昇の中で、ドル高・円安は120円を越えて進む。しかし大幅な円安は日本の輸出競合相手であるアジア諸国を苦境に追い込み、「第2次アジア通貨危機」、さらには中国バブル破裂をもたらす――。

 前編(http://nikkan-spa.jp/481710)に続き、これから2015-2016年にかけて大幅な円安が進む中で、日本と世界で起こることについて考えてみました。


◆脱デフレ、黒田「法王」誕生=アジア通貨危機、そして中国バブル破裂


 米超金融緩和見直しを横目に、「異常な金利低下」修正の米金利急騰、そしてインフレ率の上昇が起こるなら、それは日本にも重大な影響をもたらすことでしょう。日米のインフレ格差は、「米インフレ率-2%=日本のインフレ率」という関係が基本となっていたので、米インフレ率上昇に引っ張られる形で、日本では脱デフレ、場合によっては黒田日銀の公約、インフレ率2%の目標達成の可能性が出てくるわけです。

 では、ついに念願の脱デフレを達成したら、ましてや公約のインフレ率2%も達成となったら黒田総裁はどうするでしょうか。黒田総裁の頭の中には、バーナンキ議長が8年、グリーンスパン議長に至っては19年も担当したことに比べ、日銀総裁の任期5年は必ずしも長くないとの考えもありそうです。

 日銀総裁の最長任期は、「法王」と呼ばれた第18代、一万田総裁の8年。このため、2%のインフレ目標達成なら、日銀総裁の再任で、「一万田超え」を目指す可能性が出てくるかもしれません。

 もしもそうなれば、安倍長期政権の下、金融政策でも黒田「新法王」誕生といった具合に、日本では長く続いた政治及び政策当局の不安定な状況が一変されることになる可能性も出てくるでしょう。

 それらを横目で見ながら、米金利上昇の結果ということを主因とした米ドル高、その裏返しの円安が110円、さらに120円へ向かって進むことになるのではないでしょうか。そんな円安は、輸出競争力でアジアにおける日本の競合相手を苦境に追い込む一因でしょう。

 1997-1998年にかけて円安が大きく進む中でアジア通貨危機が起こったことの再現、「第2次アジア通貨危機」が起こることになるかもしれません。

 1990年代の「第一次アジア通貨危機」では、通貨の切り下げに追い込まれた国々が相次ぐ中で、通貨の切り下げを行わず、アジア通貨危機の「アンカー役」になったのが中国でした。ところが、今回はその中国に再度「アンカー役」を期待するのが難しいかもしれません。BRICs時代が転換点を向かえ、また中国では「一人っ子政策」の反動で、労働人口拡大がピークに達し、縮小に転じることから、経済成長見通しが急悪化する懸念があります。

 そんな中で起こる「第2次アジア通貨危機」では、中国はついに人民元切り下げに踏み切るか、それとも中国バブル破裂が起こるかといったことが試される可能性もあるのではないでしょうか。

 もちろん、これまで述べてきたことのすべてが現実になるわけではないでしょうが、それでも半分ぐらいは実現する可能性があるかもしれません。そうであるなら、2016年にかけて円安が120円を超えて進む中で、僕らはそんな時代をこれから生きていくことになるのです。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。

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