吉田 恒氏 BRICsに象徴される新興国時代から一転、ブラジルなど新興国を金融危機が襲う、それは「ポスト・バーナンキ」の新米FRB議長の腕試しのように米国の金融市場も大いに揺さぶるところとなり、それらを横目に見ながらBRICsの一角、ロシアは生き残りの道を探るべく、ついに北方領土返還も決断する――。

 今後2-3年で起こりそうな世界と日本のドラマティックなシナリオについて、2回に分けて考えてみたいと思います。まず今回はその前編。


◆BRICs危機、イェレン混乱、そして北方領土サプライズ


 一つの手掛かりになるのは、やはり米国の金融政策転換でしょうか。米国は1990年代半ば、2000年代半ばと、ほぼ10年ごとに金融緩和から引き締めへの転換を行ってきました。そして、この2010年代も半ばにかけて超金融緩和の見直しを進める見通しになってきました。

 過去の金融緩和の見直し局面では、エマージング市場混乱のきっかけになることがありました。米金融緩和局面で新興国に過剰に流入した資金が、緩和の修正、引き締めへの転換に伴い流出へ転じ、そのタイミング次第では通貨の急落や金融危機が起こったというのが基本的な構図でしょう。1990年代半ばのメキシコなど中南米の通貨危機はその代表例です。

 このようなことを参考にすると、今回の米超金融緩和見直しから引き締めへ転換する局面でも、新興国市場の混乱は要注意でしょう。この数か月起こってきた資源国、新興国の通貨急落は、その始まりの可能性も考えられます。

 こんなふうに重要な鍵を握る米金融政策の最高責任者が、2014年1月末で交代する見通しになっています。バーナンキ議長から、今のところはイェレン副議長への交代が有力視されていますが、「バーナンキ路線の後継者」として、スムーズな移行となるのでしょうか。

 ただ、このような中央銀行トップの交代直後に、金融市場の大混乱が起こるということが過去には何度かありました。バーナンキ議長の前任者は、その後「史上最高のFRB議長」とされたグリーンスパン議長でしたが、彼が議長就任直後にNY発世界株同時暴落、「ブラックマンデー」が起こったわけです。

 最近では、ドラギ現ECB総裁が就任直後、イタリアを主役とした欧州債務危機が深刻化したということがありました。それはあたかも、「新米」の通貨の番人の「腕試し」でもするように。その意味では、今回も、「やはりバーナンキがいないとだめだ」といった具合に「イェレン・ショック」のような展開が起こる可能性も要注意ではないでしょうか。

 米金融政策の転換は、これまでも新興国の金融市場に混乱をもたらすことがあったわけですが、それに加えて今回の場合、シェール革命に象徴されるエネルギー革命の影響も重なることから、一部の新興国は影響をより深刻に警戒している可能性はあるでしょう。

 例えば、BRICsの一つ、ロシア・プーチン大統領の頭の中には、こういった背景の中で北方領土返還を決断する一つのタイミングであるという考えが浮かんでいる可能性はないでしょうか。

 BRICs時代の転機、そして新エネルギー革命というロシアにとっての逆風、そういった中でプーチン大統領が北方領土の3島返還というカードを切ってくる可能性は、永田町や霞ヶ関の一部で密かに意識されています。

 もしもそんな「北方領土サプライズ」となったら、安倍総理は、あくまで4島返還にこだわるか、それとも3島返還で交渉のテーブルにつくということなら、「国民に信を問う」ということで解散・総選挙となる可能性も出てくるでしょう。

 そうなった場合、選挙結果は、おそらく自民党の歴史的大勝となり、安倍総理の任期は「小泉超え」確実の長期政権が確実になるのでしょう。(続く)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社で編集長、代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。

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