吉田 恒氏 参院選が終わりました。為替はこれからどう動くのでしょうか。昨年12月中旬に衆院選がありましたが、それは結果的に見ると、一段のドル高・円安大相場のきっかけの一つになりました。では、今回の参院選も同じように、さらに105-110円へ一段のドル高・円安を目指すきっかけになるのでしょうか。


◆衆院選と参院選でドル円の何が違うのか


 昨年12月の衆院選と今回の参院選では、ドル円を取り巻く要因でいくつか違いがあります。その一つが5年移動平均線からの乖離率です。昨年衆院選前後の同乖離率はマイナス5%程度だったのに対し、足元はプラス10%を大きく超えた状況が続いているのです。

 5年線からの乖離率は、中長期的な評価の目安になります。つまり、昨年12月衆院選前後のドル円は、中長期的にドル下がり過ぎ修正の途上にあったわけですが、一方で足元は、5年線からの乖離率が1998年以来の水準まで上昇してきたわけですから、かなり中長期的にドル「上がり過ぎ」警戒度が高くなってきたようです。

 これは、円の総合力を示す実効相場で見ると、よりわかりやすいかもしれません。昨年12月衆院選は、結果的に円実効相場が一段と下落に向かう、つまり円全面安のきっかけになりました。ただし、この円実効相場も、5年線からの乖離率で見ると、足元は昨年衆院選前後とかなり違うようなのです。

 昨年12月、衆院選当時の円実効相場の5年線からの乖離率はプラス10%弱でしたが、足元は逆にマイナス10%以上に拡大しています。これは、昨年衆院選前後は、総合的に行き過ぎた円高是正の途上にあったものの、足元は一転して円安が総合的な限界の目処に達している可能性を示しています。

 ちなみに、足元の円実効相場の5年線からの乖離率は、2007年6月とほぼ同じ水準です。2007年6月とは、ドル高・円安が124円でピークアウトするなど、中期的な円安トレンドの転換点になったタイミングでしたが、円の総合力を示す実効相場の5年線からの乖離率は、そんな2007年6月と同じような状況になっているわけです。

 以上のように見ると、昨年12月衆院選と今回の参院選で、ドル円を取り巻く要因で何が違うかといえば、大きな違いの一つは中長期的な評価でしょう。昨年12月衆院選当時のドル円は、中長期的に行き過ぎたドル安・円高修正のプロセスにあったので、衆院選の結果に後押しされる形でドル高・円安は一段と弾みがつく形になったのでしょう。

 そういった中で、昨年10月から今年5月まで8ヶ月連続でドル高・円安となりました。ただ、さすがにこの記録的な「一直線のドル高・円安」によって、ドル円の中長期的な評価は一変したわけです。

 ドル円の5年線からの乖離率が足元の水準よりさらに上昇したこと、また、円の実効相場の5年線からの乖離率が足元の水準よりさらに低下したことはありましたが、それは非常に少なかったのです。

 あの5月にかけて103円までほとんど一直線に展開したドル高・円安はきわめて記録的な動きでした。私は、それでも中期トレンドとしてのドル高・円安が終わったわけではなく、「続き」を残していると考えていますが、その「続き」はこれまで見てきたように、記録的なドル上がり過ぎ、円下がり過ぎ拡大を試すもののようですから、そんなに簡単なことでもないのではないでしょうか。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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