吉田 恒氏 バーナンキFRB議長は来年1月末で任期満了、退任するとの見方が一般的なようです。ただ過去においては、中央銀行トップ交代が、バブル破裂など金融市場混乱のきっかけになることがありました。今回は、「ポスト・バーナンキ」、たとえばそれは今のところイェレンFRB副議長の昇格が有力視されているようですが、その手腕を試すような「イェレン金融混乱」にはならないでしょうか。


◆逆バブル破裂の中での金融政策トップ交代という不安


 バーナンキ議長の前任者、グリーンスパンFRB議長が誕生したのは1987年8月。その約2か月後に、「ブラックマンデー」、NY発世界同時株暴落が起こりました。また、日本の株バブル崩壊は、1990年1月から始まったが、それは1989年12月、三重野日銀総裁誕生の直後というタイミングでした。

 近いところでは、ECB総裁とユーロ危機についてもこのパターンは当てはまっていたのではないでしょうか。ドラギ総裁が誕生したのは2011年11月。当時の欧州債務危機の主役はイタリアだったのですが、イタリア出身の「ユーロの番人」誕生を試すように、イタリア危機は翌年1月にかけて深刻化に向かったのです。

 以上の中で、前任者から比較的明確な政策方針の転換となったのは三重野総裁のケースであり、他の2例は、前任者が比較的評価の高い人物だったこともあって、基本的には「偉大なる前任者の路線の踏襲」といったスタンスだったのですが、金融市場は波乱に見舞われたのです。

 それは、あたかも「新人」トップの手腕を試すような動きでした。そしてもう一つ重要なのは、当時のマーケットは、そんなふうに「新人」トップの手腕を試したくなるほど、いつ混乱が加速してもおかしくないようなエネルギーが充満していたということでしょう。

 では、その後者の点について今回はどうか。今回要注意なのは、やはり米金利でしょう。この数か月、米金利は急上昇していますが、これはもともと一部にあった「米金利低下バブル」、別な言い方をすると「逆バブル」の破裂が始まっていることを受けた動きの可能性があります。

 過去2年程度、米金利低下は米景気で説明できる範囲を大きく逸脱した動きであり、金利は景気で決まるといった原則からすると、それはまさに「異常な金利低下」であり、つまり「金利低下バブル」の可能性があったわけです。

 そんな「金利低下バブル」破裂が始まっている中で、FRBトップが交代するとして、それが平穏無事に過ぎるだろうか。過去の経験からすると、「新人」トップの手腕を試すような金融市場の混乱が起こる可能性は少し注意する必要があるのではないでしょうか。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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