吉田 恒氏 昨年までFX投資家の間で大変人気の高かった豪ドルなど、資源国通貨や新興国通貨の下落が広がっています。一方で、「不人気」の代表のようだった米ドルの大幅高といった具合に、「人気番付」が激変しているのですが、その背景を再確認してみたいと思います。


◆米ドル大幅高、豪ドル急落=頭を切り替えられるか


 米国が金融緩和から引き締めへ転換する過程では、新興国の金融危機が起こりやすいということがあります。1990年代半ばのメキシコ通貨危機などがその典型でしょう。米金融緩和局面で過剰に新興国に流入した資金が、米国の引き締めへの転換とともに流出へ転換、そのペース次第では新興国市場の混乱、「エマージング危機」が起こるということです。

 2010年11月、FRBがQE2を決めた局面で、「通貨戦争」という言葉が注目されました。過剰な資金流入に伴う自国通貨の過大評価に対して、ブラジルなど新興国中心に批判の大合唱となったわけです。そして、そのQEが今度は縮小へ向かう見通しとなってきたことで、資金の流出に伴う通貨の急落リスクが浮上しているわけです。

 これは、日本の外貨運用にとっても小さくない影響になりそうです。昨年まで、外貨の王様、米ドルが対円で歴史的安値圏での膠着が続く中、日本からの外貨運用の主役はまさに資源国通貨であり、新興国通貨でした。それが、米金融政策転換が進む中で、これまで見てきたように評価が激変する可能性が出てきたわけですから、頭の切り替えがすこぶる試される局面といえるでしょう。

 さて、そんな資源国、新興国通貨の中でも、日本の投資家の間でここ数年最も人気の高い通貨だったのが豪ドルでしたが、その豪ドルは5月以降一段安となっています。

 それについて、豪州の中央銀行であるRBAは2日発表した声明で、「為替レートは引き続き高い水準にある」、「為替レートは時間とともに一段と下落する可能性がある」などとの見方を示したことなどから、最近は改めて豪ドル下落が加速する局面もありました。

 <資料1>は豪ドル米ドル相場と、米豪の購買力平価の関係を見たもの。これを見ると、ここ数年の豪ドルは、それまでの上限となっていた米豪消費者物価基準の購買力平価を大きく上回る動きとなっていたことがわかるでしょう。その意味では、確かに「行き過ぎた豪ドル高」の可能性があったわけです。

※<資料1>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=471852
<資料1>

 この消費者物価の購買力平価は、足元で0.84ドル程度。その意味では、まだ、「引き続き高い水準にある」、「時間とともに一段と下落する可能性がある」という、今回のRBA声明が示した見方と一致しているといえるでしょう。

<資料2>は豪ドル米ドルの90日移動平均線からの乖離率。これを見ると、足元の乖離率はマイナス10%近くまで拡大してきたことがわかります。これまで同乖離率がマイナス10%を大きく上回ったのは、2008年9月、リーマンショック前後の局面のみ。

※<資料2>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=471853
<資料2>

 その意味では、「第2のリーマンショック」のような「異常時」ということでなければ、短期的には豪ドルもかなり下がり過ぎ懸念が強くなっているようです。今回のRBA声明が豪ドルについて「一段と下落する可能性がある」という言葉の前に、「時間とともに」という言葉を添えたのも、この90日線からの乖離率からすると納得できる気がするところでしょう。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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