植草一秀氏◆マネーな人々 今週の銭格言
【選者】政治経済学者 植草一秀氏

アベノミクス人気をもたらした最大の要因は、株価の大幅上昇にあった。しかし、この株価上昇をもたらしていた「異次元」金融緩和への期待が今、失望へと変わり始めている


◆長期金利上昇で円高。「アベノミクス」シナリオの挫折


 日銀の「異次元」金融緩和が金利上昇をもたらし、為替が円高に回帰する可能性が高くなり、株安がもたらされる―。アベノミクスのストーリーに異変が生じるとの見立てを、以前の記事(http://nikkan-spa.jp/444293)で指摘した。

 実際、日経平均株価は'13年5月22日の1万5627円(終値)をピークに急反落に転じ、6月13日には1万2445円にまで下落。日経平均株価は'12年11月14日の8664円から半年かけて6963円も上昇したわけだが、わずか20日間で、その46%にあたる3182円が消滅した。つまり、アベノミクス絶賛の嵐の約半分は、カゲロウのような存在だったことになる。

 ここで今回、紹介する下記のチャートをじっくりと見ていただきたい。'11年年初から現在までの円ドルレートと日経平均株価の推移を示している。2つのチャートは区別がつかないほど酷似している。つまり、日本の株価はほぼ完全に円ドルレート連動で推移してきていることがわかる。

⇒【チャート】円ドルレートと日経平均株価
http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=466542

円ドルレートに連動する日経平均株価。アベノミクス効果による円安・株高はもはや期待できない!?
【上図】円ドルレートに連動する日経平均株価。アベノミクス効果による円安・株高はもはや期待できない!?

 この関係が存在するなかで、安倍政権は金融緩和政策の強化を強く提唱し、実行。金融市場はその効果に期待し、日本の長期金利低下という形で反応してきた。連動して、日本円は下落し、株価は上昇。これが、「アベノミクス効果」による株高の基本メカニズムだ。

 ところが、黒田新総裁体制の日銀が4月4日に金融緩和政策を発表し、それらを実行して以降、「アベノミクス効果」がまったく発現されなくなった。長期金利は低下するどころか、上昇傾向を示し始めたのである。日本のこの長期金利上昇が円高傾向を生み、連動して株価の急反落を招いたのである。米ドル=103円台まで進んだ円安は、あっという間に93円台にまで下落してしまった。

 5月に生じた円安と株高を細かく観察してみると、日本の長期金利低下による円安ではなく、米国金利上昇による円安だったことがわかる。つまり、「アベノミクス効果」による円安・株高ではなかったのだ。アベノミクスの金ピカのメッキは、早くも剥がれ始めているのが実情だ。

⇒【後編】に続く「アベノリスクとは?」
http://nikkan-spa.jp/466297


 
【植草一秀氏】
シンクタンク主席エコノミスト、大学教授などを経て、現在はスリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/)。『アベノリスク』(講談社刊)を7月上旬に上梓