吉田 恒氏 FRBの超金融緩和見直し、特に量的緩和、QE解除に対して、債券市場や株式市場の警戒感が強いようです。ただ本当に超金融緩和見直しが早まる見通しになってきたのでしょうか。むしろ逆に、今のところ2015年まで続けるとしている超金融緩和策を2016年以降まで延長する可能性すら出ており、その意味では市場の理解は「大間違い」の可能性すらないでしょうか。


◆金融市場は「大間違い」の可能性がないか!?


 FRB超金融緩和の大前提は、失業率が6.5%まで低下するまで現行のゼロ金利政策を続けるというもの。ではそれはいつぐらいになるのでしょうか。

 大まかにNFPが18万人平均で増えると、失業率は0.05%ペースで低下する計算になるとされます。失業率は4月に7.5%だったが、それがあと1%低下するのは、NFP18万人ペースの増加なら20か月かかる計算になるため、要するに2015年以降という見通しになるわけです。

 別の言い方をすると、NFPが18万人以上のペースで増えてくると、失業率が6.5%まで低下するのも早まる、つまり2014年中に実現する可能性が出てくる計算になります。例えば、26万人平均でNFPが増加すると、失業率は0.1%ペースで低下する計算になるようです。つまり6.5%までの低下は10か月で達成だから、2014年前半に実現する見通しになるわけです。

 ところが、ここにきて一部のFEDウォッチャーが注目しているのは物価上昇率の鈍化。FOMCは2013年末時点で、インフレ率(PCEコアデフレーター)予想の中心を1.5-1.6%と考えていたところ、4月インフレ率は1.1%といった具合に、予想を大きく下回っています。

 こういったことから、予想以上の低インフレを受けて、超金融緩和は失業率が6%を割れるまで続けても良いのではないかといった見方も、一部のFEDウォッチャーの間で取り沙汰され始めました。

 仮にそうなると、失業率はあと1.5%以上も低下するまで超金融緩和は続くことになります。上述のNFPを当てはめると、18万人平均での増加なら、失業率が1.5%低下するまであと30か月かかることとなり、26万人平均の増加でも15か月かかる計算になるわけです。

 NFP増加が平均で20万人を下回っているようなら、超金融緩和は2016年以降まで続く見通しになり、平均の増加が25万人を上回るペースになっても超金融緩和は2014年後半まで続く見通しになるわけです。要するに、予想以上の低インフレで、超金融緩和終了のハードルはより高く、つまり早まるどころか、逆により長引く可能性すら出てきたようなのです。

 それは、ここにきて超金融緩和見直しへの警戒感が強まってきたとの解説と矛盾するでしょう。にもかかわらず、なぜ警戒感が急拡大しているとの解説になるのか。それは金利上昇が加速していることが主因でしょう。

 ただ金利上昇は、金融政策への警戒感が強まることだけで加速するものでもないでしょう。違った理由で金利上昇が加速しているのに、それを金融政策への警戒感と「こじつけている」可能性はないでしょうか。

 もしそういった見方が正しかったら、金利上昇が落ち着いた後は、金融政策を巡る「誤解」の反動で、金利が一定期間低下に弾みがつく可能性も注目されるのではないでしょうか。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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