吉田 恒氏 日本を中心に株価が不安定な動きになってきました。これは、FRBの量的緩和、いわゆるQE縮小接近への警戒感などとの説明が多いようです。ただ、私は少し違うのではないかと考えています。ある意味、もっと「怖い話」かもしれません。


◆ノーコントロールの金利上昇という「恐怖」


 私は、日米を中心に金利、特に長期金利の上昇を、中央銀行などが制御しきれなくなりつつある、要するに「アウト・オブ・コントロール」になり始めていることへの漠然とした不安が、バブル、つまり過度なリスクテークを逆流させる引き金を引いたのではないかと考えています。

 5月23日に日経平均が1000円以上の暴落、いわゆる「2013年のブラックサースデー」が起こる前、日本の長期金利は1%に、そして米長期金利は2%にそれぞれ乗せてきました。日本の場合は、前日の22日、長期金利上昇への対応が注目されるなかで行われた日銀会合、黒田総裁の会見でも長期金利上昇は止まらず、そして約1年ぶりに1%に乗せてきたわけです。

 私は、そもそも今回の日本の長期金利上昇を止めるのはかなり難しいと考えてきました。<資料1>のように、今回の長期金利急騰の始まりは、異常な金利下がり過ぎの反動と考えてきたわけです。そして今回と似たような、異常な金利下がり過ぎの反動が起こった1998年10月、2003年6月以降は、一転して「異常な金利急騰」に向かったのです。

 単純に、過去の2つのケースと同じパターンで今回長期金利上昇が続くなら、数か月以内に1.5%近くまで一段と長期金利は上昇する計算になってしまいます。実際にそうなるかはともかく、長期金利上昇をコントロールするのは基本的には無理なことなのです。

※<資料1>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=448265
<資料1>

 今度は米国のケースについて考えてみましょう。米長期金利も2%の大台突破となってきましたが、これはFRBのQE縮小、つまり債券購入を減らす時期が近づいていることへの警戒が主因といった解説が多いようです。

 でも、21日にダドリーNY連銀総裁、そして22日にバーナンキFRB議長と、FOMCを代表するハト派の発言が続き、時期尚早な引き締め転換の景気への悪影響を確認したバーナンキ発言に象徴されるように、どちらかというと早期のQE縮小への慎重姿勢を確認する内容だったと報道されました。

 その前に、タカ派とされる地区連銀総裁などによるQE縮小発言を受けて米長期金利はかなり上昇してきました。バーナンキ発言は、それをけん制する、その意味では長期金利上昇歯止め狙いがあった可能性があります。ところが結果は、長期金利は一段と上昇し、2%に乗せてきたわけです。

 一般的には、長期金利が上昇したから、バーナンキ証言の中でもQE縮小などへの言及に反応したとの見方になっていますが、私は微妙に違うのではないかと考えています。つまりバーナンキはむしろ長期金利上昇に歯止めをかけたかったところ、それができなかったのではないか。だとすると、こちらもアウト・オブ・コントロールになっているのかもしれません。

 私はもともと、<資料2>を使いながら、本来的に金利は景気で決まるのが、過去2年ほどは景気でまったく説明できない金利低下になっているので、その意味では「異常な金利低下」の可能性があることを指摘してきました。そんな「異常な金利低下」の修正が本格化し始めたら、それはFRBも制御できなくなりつつある可能性を私は注目しています。

※<資料2>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=448266
<資料2>

 金融市場は「不確実性」を嫌います。昨年6月のギリシャ再選挙騒動などはその際たるものだったでしょう。22日の会見で黒田総裁も言っていたように、長期金利は基本的にコントロールできないものですが、重要な局面においてその「制御不能」を確認すると、それは大いなる不確実性として、市場にのしかかってきたのではないでしょうか。

 株式市場は、前段で述べてきたように、過熱気味、つまり過度なリスクテークの懸念があります。そういったなかで、中央銀行の長期金利上昇、ノーコントロールという「大いなる不確実性」への懸念が、過度なリスクテークの逆流で、株暴落をもたらしたのではないでしょうか。(了)

 
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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