吉田 恒氏 日本の長期金利(10年債利回り)が今週に入り、一時0.9%程度を記録するなど急上昇しました。ただ、さらに一段の急騰となってもおかしくない要素も秘めているだけに、「黒田日銀」としても正念場を迎えることになるかもしれません。


◆「黒田緩和」の真価が問われる


 <資料>を見ると、今回の長期金利急上昇の一因は、明らかに「異常な低下」の反動です。4月に長期金利の90日移動平均線からの乖離率はマイナス40%程度まで拡大したが、この水準まで乖離率が拡大したのは過去2回しかありませんでした。その意味では、記録的な、ある意味「異常な」下がり過ぎの可能性があったわけです。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=440852
<資料>

 そして、今回と同じほど「異常な低下」となった過去2回のケースでは、その後は一転して金利の「異常な上昇」が起こっていました。ですから、今回も「異常な金利低下」から、一転して「異常な上昇」へ転じる可能性は要注意だったわけです。

 これまで述べてきた今回と似た過去2回のケースは、1998年10月、そして2003年6月でした。この2回は、世界景気が悲観論から楽観論へ急旋回した点でも似ていました。世界的に景気楽観論へ転換し、金利上昇となるなかで、日本の金利もそれに連動すると、今度は一転して「止まらない金利上昇」になったということでしょう。

 この点も今回は似ています。世界的に景気回復観が広がり、金利上昇となるなかでは、「黒田緩和」とはいえ、日本の金利だけをさらに低下させるのは簡単ではなく、それどころか金利急騰回避で真価を問われる可能性があるわけです。

 さて、<資料>を見ると、日本の長期金利の90日線からの乖離率は±20%の範囲内で推移するのが基本。ちなみに、足元、乖離率プラス20%が日本の長期金利0.8%程度と一致します。要するに、ここまでは「下がり過ぎ」の反動に伴う「普通の金利上昇」といえるでしょう。

 ただ、今回と似た過去の2例は、<資料>でわかるように、乖離率が一気にプラス100%近くまで異常な拡大に向かいました。「異常な低下」の反動と、世界的金利上昇への連動が「異常な金利上昇」をもたらしたわけです。

 もしも諸条件が似ている今回の場合も、乖離率がプラス100%へ向かう異常な拡大になるなら、日本の長期金利は1%を大きく超えて、1.5%に向かう計算になります。「黒田日銀」は、「金利低下=円安」リード役ではなく、一転して「金利急騰=円高」回避で真価を問われることになる可能性も秘めているのではないでしょうか。(了)
 

【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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