吉田 恒氏 異次元の「黒田緩和」は、2013年末110円、2014年末130円といった、「黒田緩和」以前は一般的に想定されなかった、その意味では「異次元の円安」をもたらすのでしょうか。それは現時点では、まだ微妙だと思います。


◆中央銀行の資金供給量で説明できないドル円の原因は?


 <資料1>は、日米の中央銀行の資金供給量の差、いわゆるベースマネー比率とドル/円のグラフを重ねたものです。このように見ると、2009年以降のドル/円は、ある程度ベースマネー比率と連動してきたように見えます。

※<資料1>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=423645
<資料1>

 そしてそのベースマネー比率は、4月4日の黒田日銀による「異次元の緩和」を受けて、<資料1>のように大幅に変化する見通しとなりました。ベースマネー比率にドル/円が連動するなら、2013年末110円、2014年末130円のドル高・円安を示唆するところになった可能性があるわけです。

 ただ、<資料2>は、そんなドル/円と日米ベースマネー比率の関係を、2009年以前に遡ってみたものです。これを見ると、2009年以降の両者の相関性では、少なくとも2006年以前は説明できないようです。では、2006年以前、ベースマネー比率が示すほどに、ドル高・円安にならなかったのはなぜでしょうか。

※<資料2>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=423646
<資料2>

 <資料3>は、そんなドル/円と日米2年債利回り差のグラフを重ねたものです。これを見ると、2006年以前、ベースマネー比率が示唆したほどドル高・円安にならなかった動きは、日米金利差とはほぼ連動していたようです。別の言い方をすると、金利差の拡大が限定的だったので、ベースマネー比率が示すほどのドル高・円安にならなかったということでしょう。

※<資料3>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=423647
<資料3>

 さて、水準は違いますが、最近もベースマネー比率が示す大幅なドル高・円安ほど、これまでのところ金利差が拡大していないということでは2006年以前の構図に似ているでしょう。そうであるなら、このまま金利差が拡大しなければ、ベースマネー比率が示す「異次元の円安」がそのまま実現するかは微妙ということになるでしょう。


◆「物差し」に古い、新しいは基本的にない


 相場が勢いづくと、これまでの「物差し」で説明できない動きになることも珍しくありません。そうなると、その「物差し」はもう古くて使えないとして、新しい「物差し」が引っ張り出されることがあります。これは、「バブル相場」でよく見られることです。

 「バブル相場」は、あとから振り返ってみると、熱狂のあまり非論理的な動きになったもので、それをこれまでの「物差し」で説明できないのはある意味で当然でしょう。私は、「黒田円安」はバブルというほどではなく、金利差拡大の先取りということが本質だと思っています。

 ただその金利差拡大が追いついてくるまでは、2013年末110円、2014年末130円といった「黒田円安」実現も一筋縄ではいかない、紆余曲折はあるだろうと考えています。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など
●ツイッター http://mobile.twitter.com/yoshida_hisashi
●毎週動画 http://www.m2j.co.jp/fx_channel/
●FXの学校「アカデミア」 https://www.m2j.co.jp/mp/my_fxacademia/