吉田 恒氏 黒田新総裁の金融緩和決定は、「黒田サプライズ」として、世界中の注目を集めました。為替相場も、「安倍円安」から「黒田円安」へ引き継がれ、「アベクロ円安」として、新たに活気づいています。その中で少し気がかりなのは、5日の円債急落、円金利急反騰でしょう。これは一時的なのか、それとも円債「黒田ショック」急落の始まりなのでしょうか?


◆円債急落が起こった98年10月、2003年6月との類似


 主に以下の2つの理由から考えると、後者の可能性があるでしょう。一つは、円債価格が上がり過ぎ、利回りが下がり過ぎとなっていたことの反動です。

 日本の10年債利回りは、「黒田サプライズ」を受けて5日、過去最低を更新、0.3%台を記録しましたが、その後は一転0.6%台へ急反騰となる場面もありました。10年債利回りが0.3%台まで低下したところで、90日移動平均線からの乖離率はマイナス30%を大きく超えたのです。

 こんなふうに同乖離率がマイナス30%以上に拡大したのは、近年では1998年10月、2003年6月の2回しかありませんでした(<資料>参照)。そしてこの2回では、その後3-4か月で1%を大きく上回る金利急上昇に向かったのでした。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=419566
<資料>

 このようにみると、5日の円債急落、利回り急反騰は、1998年10月や2003年6月と同様に、金利「下がり過ぎ」修正で、6-7月にかけて10年債利回りが1%を大きく超える動きが始まった可能性があるわけです。

 でも、「黒田緩和」は、日銀による量的緩和、つまり債券購入の拡大です。それなのに、「債券が急落するだろうか」という疑問はあるでしょう。ただ、FRBの量的緩和、QE決定では、直後はむしろ債券急落、利回り上昇となっていたのです。

 FRBは、2009年からQE政策を2012年のQE3まで行ってきましたが、QE決定後はむしろ3-4か月で1%以上の利回り上昇、債券価格急落となっていたのです。その意味では、「黒田QE」でも、日銀が債券購入を拡大するにもかかわらず、例えば10年債利回りが夏にかけて1%を大きく超えていく可能性は、この観点からもありうるでしょう。

 もしも、そんなふうになったとしても、それはこれまで見てきたように、金利「下がり過ぎ」の反動であり、そもそもQE後はFRBの例でみても金利上昇が基本なのです。債券急落、円金利上昇となったら、「黒田緩和」やり過ぎ批判や、円高懸念浮上ともなりかねないだろうから、重要なポイントになりそうです。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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