吉田 恒氏 黒田新日銀総裁による金融緩和強化が注目されているようです。ただ、この「影の主役」は、実はドル/円相場かもしれないのです。


◆「円安誘導緩和」には慎重


 黒田氏は、為替政策の実質的な責任者である財務官出身で初めての日銀総裁ということだから、これまでのどの総裁よりも為替相場が頭に入っている総裁の可能性があるでしょう。

 そんな黒田総裁からすると、ドル/円がこの数か月で大幅なドル高・円安となり、最近も95円前後で推移している中で、あえて一段とドル高・円安をもたらす可能性もある追加緩和を、緊急会合を開いてまでも行う可能性は少ないのではないでしょうか。黒田総裁からすると、それはさすがに米国なども刺激しかねないとの判断も働きそうです<資料>参照。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=410382
<資料>

 財務官は「通貨マフィア」と呼ばれます。元「通貨マフィア」として、為替相場とG7など諸外国の考えを熟知している黒田新日銀総裁からすると、円安の中では追加緩和は急ぐ必要はなく、大きく円高になりかねない、例えば90円割れのリスクが広がりそうになったところで、「サプライズ追加緩和」といったイメージも持っているかもしれません。


◆財務省の国際金融外交支配


 この黒田新総裁就任を受けて、財務省は4月に人事を行い、新財務官には古澤理財局長が就任すると報道されています。おそらく、前例のない財務省-日銀緊密体制ができることとなりそうです。

 新日銀総裁となった黒田氏と、次期財務官とされる古澤氏の関係はきわめて深いでしょう。黒田氏が財務官に就任したのは1999年ですが、その最初の財務官室長、これは財務官の側近中の側近というポストですが、それこそが実は古澤氏だったのです。

 このように見ただけでも、国際金融外交において、新日銀総裁と次期財務官の関係はきわめて親密と考えられます。国際金融外交を担う「3トップ」のうち、政治家が就任する財務大臣以外の2つのポストである日銀総裁と財務官の関係がこれほど緊密なのは、かつてなかったのではないでしょうか。

 これは、一言でいうと、財務省の国際金融外交の支配ということになるかもしれません。それにしても、財務省は財務省の「省益」を、日銀は日銀の「行益」があり、対立することもやむをえない感じはしますが、これまで見てきた財務官と日銀総裁の異例の緊密な関係は、「あうんの関係」なのかもしれません。

 普通に考えると、よほどでない限り、両者の深刻な対立にはならず、「財務省思考で動く日銀」といった展開が当面続くということではないでしょうか。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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