吉田 恒氏 過去3か月余りで15円以上も一気に進んできたドル高・円安の動きは、安倍総理の金融緩和強化などを期待した「安倍円安」とされます。ではこの「止まらない安倍円安」がもしも止まったらどうなるかについて、今回は考えてみたいと思います。


◆「安倍円安」と1995年の「榊原円安」


 私は、今回の「安倍円安」は、同じように「超円高」とされた歴史的円高の反転局面に起こった1995年の「榊原円安」と呼ばれた動きと類似点が多いと考えてきました。この「榊原円安」も、1995年7月から9月にかけての2か月余りで約20円もの「押し目なきドル高・円安」が一気に展開したのです。

 その「榊原円安」が一息ついたのは、当時の市況を調べてみると「材料出尽くし」によるところが大きかったようです。「榊原円安」一段落を時系列で確認すると以下のようになっていました。

 9月20日=この日発表される日本政府の新経済対策に合わせ、円押し下げ介入が行われるとの思惑からドルはこの間の高値を更新し104.7円を記録。しかし対策発表後に円押し下げ介入がなかったことへの失望からドルは一気に102.3円まで急落。

 9月21日=欧州情勢も嫌気したことからドルは一時97円丁度まで一気に暴落。結局は99円丁度まで反発してクローズ。

 9月22日=日銀のドル買い・円売り介入を受け、ドル一時100.9円まで急反発。結局99.3円でクローズ。

 そして、その後は日本の中間期末を控えていたこと、また介入警戒感などから100円前後の一進一退がしばらく続き、そして数か月のもみ合いを経て、ドルが105円を越えて高値更新となったのは年明け以降だったのです。


◆「材料出尽くし」で起こったこと


 1995年7月以降、「円高退治のミスター円」として、異色の財務官僚、榊原英資氏がマーケットで一般的に認知されると、協調介入、協調金融政策発動、円高是正策の発表など、ドル高・円安を後押しする材料が、マーケットの意表をつくサプライズのタイミングで繰り出され、その中で「押し目なきドル高・円安」となりました<資料>参照。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=394924
<資料>

 上述の9月20日、日本政府の新経済対策発表は、そんな円安への動意が期待される材料の一つだったのでしょう。そこに、100円を超えた水準でも一段と円安への誘導を狙った円押し下げ介入があるかもしれないとの思惑が上乗せられたわけです。

 当時の報道で、市場関係者のコメントを見ると、「新経済対策に合わせ円押し下げ介入があれば一気に110円を目指すだろう」といった指摘もありました。しかし、財務省の為替介入実績を見ると、当時、100円を越えた水準でドル買い介入は行われませんでした。つまり、円押し下げ介入は、マーケットの過剰な期待だったのです。

 9月20日、まさに期待が行き過ぎたものだったことが確認されると、上述のようにドルは一日で2円以上の急反落となったのです。そして翌日にかけて、ドルは急落。これを止めたのは、翌22日のドル買い介入でした。

 この「榊原円安」の例を見ると、材料出尽くしと過剰な期待が失望に変わると、さすがに相応のドル急反落となっていました。ただそれは、介入再開のお陰なのか、ほんの2営業日程度といったごく短期の「反乱」で終わりました。後から振り返ると、この9月21日の97円は、「最後のドル買い場」だったのです。

「榊原円安」と「安倍円安」は違います。ただ、似ている点も少なくありません。「もしも安倍円安が一服ついたとしたら」、その後にどんな展開が起こるかを考えるうえで一つの参考程度にはなりそうです。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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