吉田 恒氏 G7、G20というのは国際会議です。そんな国際会議の開催をきっかけに、最近にかけての急ピッチな円安への批判も出てきました。そこで今回は、円安は外国にとって「害」なのかについて考えてみたいと思いますが、普通はこれほど急激な円安は「害」でしょう。


◆むしろドル急騰を黙認する米国が「謎」


 今回のドル高・円安は、昨年10-11月の78-79円程度から、この2月には一気に95円に迫るものとなりました。つまりほんの3-4か月で15円以上ものドル高・円安になったのです。これは、日本が金融緩和を強化し、金利が低下する中での円相場の下落という意味では、政策的にも整合的なものです。

 ただ為替の場合は、相手もあります。米国の方もこの間、金融緩和を続けています。その中で、ドルがほんの3-4か月で15円以上もの大幅上昇となったわけです。

 想像してみて下さい。これが日本の場合だったらどうでしょうか。例えば、日本は金融緩和を続ける中で120円の円安になっていました。それが、金融緩和は変えないにもかかわらず、ほんの3-4か月で100円に迫るドル安・円高になったら、日本ではどんな議論になるでしょうか。

「日銀は何をしているのだ。もっと金融緩和に動け!」、「米国はドル安を放置せず、止めろ!」。

 それは単なる想像ではなく、2007年に124円からドル安・円高が始まると、2008年にかけて実際に日本で起こった現象でした。こんなふうに見てくると、今回ほんの3-4か月で15円以上ものドル高・円安になっていることに対する諸外国の反応は、むしろおとなしいとさえいえるのではないでしょうか。


◆「TPPサプライズ」というシナリオ


 ではなぜ、米国はドル高・円安に寛容なのでしょうか。何か「裏」があるのではないでしょうか。

 来週、日米首脳会談が予定されています。その中で、米オバマ政権はいくつか安倍政権に対して一段の歩み寄りを期待しているでしょう。その一つが、いわゆるTPP交渉へ安倍政権が参加を宣言することと見られています。駆け引きしている最中に、「円安はダメ」と言ったら、安倍政権の譲歩などとてもできなくなるでしょう。

 そんな駆け引きが奏功したのか、実はここに来て安倍総理が日米首脳会談で、TPP交渉参加を「サプライズ宣言」するとの見方が密かに囁かれ始めたようです。もしそうなったら、オバマ政権は大歓迎でしょう。円安批判を封じた甲斐があったということになるでしょう。

 そもそも、米国が円安を批判しなくても、止まらない相場などないのだから、ほんの3-4か月で15円以上も一方的に展開してきたドル高・円安は、普通に考えたら一旦はいつ終わってもおかしくない段階に入っているということではないでしょうか。それは、米国や、G7、G20に教えてもらわなければならない筋合いのものではないでしょう。

 それに比べたら、TPP参加表明は今がとても重要なタイミングではないでしょうか。普通は、7月参院選を控え、政治的には妥協しにくいでしょう。ただ安倍政権が異例の高い支持率がある中では、この政治的妥協が可能な数少ないチャンスかもしれない。日米首脳会談とは、その絶好の舞台の可能性があるわけです。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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