吉田 恒氏 よもや変えるのは無理かと思われた円高が、「円高退治のヒーロー」出現とともに一転して大幅な円安に向かっていったという今回の「安倍円安」の原型は、1995年の「榊原円安」と呼ばれる動きだったということを以前紹介しました(http://nikkan-spa.jp/370859)。その「榊原円安」は、「バブル破裂」を警戒されながら、結局は不発に終わったのですが、さて今回も「安倍バブル破裂」は起こらないのでしょうか?


◆「安倍円安」の原型1995年「榊原円安」


 今回のドル高・円安の最大の特徴は、「安倍円安」とも呼ばれるように、安倍総理の発言に敏感に反応する形でドル高・円安が大きく進んできたということです。さらに最近は、政治家や学者によるドル高・円安に関する具体的な目標水準も大いに注目を集めるようになってきました。そして、ドル高・円安の背中を押すような、切れ目のない政策発動。

 このような今回のドル高・円安を巡る特徴は、1995年、「超円高」反転相場によく似ている気がします。今回に匹敵する歴史的な円高が反転に向かった1995年からのドル高・円安も、特定の人物が円高是正のリード役として「ヒーロー」視され、政治家などが具体的な目標水準発言を繰り返す中、息をもつかせぬ政策発動でドル高・円安は加速しました。

 ドルは1995年4月に、G7が「ドル安を反転(リバーサル)させる」といった主旨の共同声明を発表し、同時にドル買い協調介入に出動したことから80円で大底を打って、反発に転じました。

 ただそんなドル高・円安は2か月程度で一巡し、その後は一進一退の小康状態となりました。そんな相場が本格的なドル高・円安へ動意づくきっかけとなったのは、ある特定の人物の登場がきっかけとなりました。

 派手な言動から「異色の大蔵官僚」とされた榊原英資氏が注目を集めた7月以降ドル高・円安は急ピッチで進み始めました。米通貨当局との親密な関係を活用したとされ、日米協調介入、金融政策の協調行動など、市場の意表をつく「サプライズ」を連発。政治家も100円、110円といったドル高・円安の具体的目標水準を発言するようになりました。

 このような1995年からのドル高・円安を巡る動きと、今回のドル高・円安を巡る動きを比較してみたのが<資料>です。「円高退治のヒーロー」が出現すると、ドル高・円安が一気に加速し、政治家の具体的目標発言などが注目を集める中で、途切れない政策発動がドル高・円安を後押ししていくといった構図は、よく似ているのではないでしょうか。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=377278
<資料>

 1995年からの「超円高」反転と今回で共通しているのは歴史的な円高の反転局面ということでしょう。歴史的な円高、つまり長く染み込んだ円高の記憶の中で、その反転が始まっても最初それは懐疑的な見方も少なくなく一気には進まない。

 ただ、「ヒーロー」が出現し、歴史的な相場の転換が一般認識化されると、溜りに溜まったドル買い・円売りエネルギーが噴出する結果、理屈で説明しきれないドル高・円安がしばらく加速する。1995年に見られ、そして今回起こっている「押し目なき」ドル高・円安とは、そんな歴史的円高反転局面特有の現象ということではないでしょうか。

 ところで、「榊原円安」は、「バブル破裂」懸念をよそに、結局大きく円高に戻すことはありませんでした。さて、今回も「安倍バブル」破裂は不発に終わることができるのでしょうか。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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