吉田 恒氏 為替相場は円安が当たり前の感じになってきました。さすがに少しは円高に戻すだろうと思ってもなかなか戻らない、いわゆる「押し目待ちの押し目なし」といった展開が続いています。これは、ドル高・円安への中長期の基調転換という認識が一般化した直後の一つの典型的現象ともいえそうです。


◆円安への転換が一般感覚になった


「円高から円安への転換はいつだったかわかりますか?」。最近、為替のセミナーでお客様にそんなことを聞いてみたら、「安倍総理の発言で円安に振れる動きが印象深いため、昨年12月の選挙前位からじゃないですか」といった答えが返ってきました。

 ただ、正確には、この間のドル安・円高のピークは、2011年10月末の75円台だったので、実はこれまでのところ、円安はすでに2011年11月から始まって1年2ヶ月も続いた形となっているのです。

 でも、最初に紹介したお話は、一般感覚としてはとてもわかる気のするものです。要するに、実際的には円高は1年以上も前に終わり、円安が始まっていたわけですが、それが一般的に認識されたのはまだほんの数か月のことでしかないということです。ただこの認識の一般化というのは、為替相場の値動きでは重要な影響がありそうです。

 具体的に、ドル高・円安への基調転換が一般認識化されると、もうしばらく大きくドル安に戻すことなく、ドル高が広がっていくことになりそうです。これを数字でいうなら、週末終値ベースで見たドル上昇率が10%以下に縮小する可能性は極めて低くなっているということではないでしょうか。


◆ドル高基調2年目のパターンを参考にすると


 <資料>は、過去4回のドル高・円安トレンドを比較したもの。ドル高への基調転換といっても、普通は事後的に認識されるものでしょう。そのせいか、ドル高基調が始まっても1年目の段階では、結構ドル安に戻す局面もあったようです。ドル高へ転換したとの見方と、まだドル安が終わっていないとの見方が交錯するためではないでしょうか。

 ただ、さすがにドル高基調も2年目に入ると、大きくドル安に戻す動きはほとんどなくなるようです。<資料>からすると、ドル高2年目に入って、ドル上昇率が10%を下回って縮小することはほとんどありませんでした。これはドル高への基調転換が一般認識化された結果、大きくドル売りに動くことはなく、むしろドルが下がったところは買いが途絶えなくなっているといった構図が浮かんできます。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=373285
<資料>
 さて、今回ドル高のスタート水準を76円として、週末終値のドル上昇率を10%で計算すると83円台になります。ドル高への基調転換が一般認識化されると、週末終値のドル上昇率が10%を基本的に下回らないなら、今回の場合、ドルはもう下がっても週末終値で83円台を大きく、長く下回る可能性は低いといった見方になるわけです。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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