吉田 恒氏 最初のドル高・円安の動きはほんの2か月の一時的な動きで終わった。しかし、2度目のドル高・円安が始まると、「スター」の登場もあって一段と広がり、一般的にもすでに円高から円安へ転換していたとの認識が一気に広がるところとなった――。


◆歴史的円高反転局面の類似性


 これは、昨年以降のドル高・円安について解説したわけではありません。従って「スター」は安倍自民党総裁ではなく、「ミスター円」、榊原元財務官のことなのです。

 そんなふうに改めて確認する必要があるほど、昨年以降のドル高・円安の動きは、実は1995年からの「超円高」反転局面と似ている面があるのです。「超円高」反転のドル高・円安も、一気に広がったわけではなく、「ミスター円」という円高是正劇の「スター」の登場により、一般認識化されたことで決定的になりました。

 ちなみに、「超円高」といっても知らない人が多いかもしれないので、少し解説します。対米ドルでの円高が初めて100円を突破したのが「普通ではない円高」といった意味で「超円高」と呼ばれたのです。

 ただそのドル安・円高も1995年4月、80円で終了。G7協調介入などでドル高・円安に反転したものの、それは同年5月87円程度で一巡するとその後はしばらくもみ合いとなったのです。

 そして、改めてドル高・円安が本格化したのは7月に入ってからでした。その後「ミスター円」と呼ばれるところとなった財務官僚、榊原英資氏が繰り出す相次ぐ円高是正策が効果的となり、一気に9月にかけて100円を大きく超えるドル高・円安となったのです。


◆「榊原円安」が示唆する「安倍円安」の今後とは?


 この95年の「超円高」でも、そしてそれを更新し、2011年にかけて75円台まで進んだ今回のドル安・円高の場合も、歴史的な円高の反転は、しみ込んだ円高の記憶の中で、簡単には認識できないものなのかもしれません。最初のドル高・円安が一時的に終わるのも、そのように考えると仕方ないのかもしれません。

 しかし、そういった中で「スター」が登場すると、とてもわかりやすいことになる。その意味では、今回の安倍総裁の役割は、1995年の「ミスター円」に重なるかもしれないでしょう。

「スター」登場で、歴史的円高の反転が一般認識化されると、それまで積もり積もったありとあらゆるドル買い・円売りが噴出する結果、記録的な円安が起こる。1995年の場合は、それが9月にかけて起こったわけです。

 ただそんな円安も、当然のように無限ではありませんでした。1995年は9月19日でそれが一巡となったのです。円の総合力を示す実効相場の90日移動平均線からのかい離率は、実は最近、そのときに近いところまで拡大となりました。

 それは短期的な円安がさすがに限界に達しつつある可能性を感じさせます。さすがに歴史的円高反転で起こった最初の円安パニックも、いつ一息ついてもおかしくない段階に差し掛かっているのかもしれません。

 今回紹介した1995年「榊原円安」は、9月に一段落すると、直後の2‐3営業日で5%程度のドル急落となりました。その後はしばらくもみ合いが続き、「榊原円安・第2幕」は3‐4か月先になったのですが、さて「安倍円安」はどうでしょうか?(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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