吉田 恒氏
 いわゆる「財政の崖」交渉が大詰めに入ってきました。まだまだ油断できませんが、もしも崖からの転落回避となったら、転落を警戒した「安全資産」、米国債への避難資金が逆流し、米国債売りが殺到、米金利上昇が加速する可能性は潜在的に秘めているのではないでしょうか。


◆「崖」回避なら米国債売り殺到になる?!


 ヘッジファンドなど代表的な投機筋の取引を反映しているCFTC統計の米国債ポジションは、12月4日時点で20万枚の買い越しとなりました(<資料1>参照)。これは2008年以来の大幅な買い越し。背景には、「崖」からの転落を警戒した安全資産への避難があったでしょう。

※<資料1>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=357843
<資料1>
 そんな米国債買い越しは、11日には13万枚まで縮小しました。7日に発表された米11月雇用統計がポジティブ・サプライズで、債券価格下落、金利上昇となった影響もあったでしょうが、「崖」への警戒に伴う米国債買いが行き過ぎ圏に入り、また一方で「崖」からの転落回避への期待が出てきたことを受けた動きの可能性もあったのではないでしょうか。

 このような投機筋の米国債取引の手口を見ていると、「崖」転落へのリスクヘッジが進められてきた結果、むしろ転落回避になった場合、リスクヘッジ解消に伴う米国債売り戻しの潜在的圧力がかなり大きくなっている可能性が感じられます。

 このように、米国債「買われ過ぎ」は修正が始まった形跡がありますが、それでもまだ相対的には「買われ過ぎ」気味の状況に違いはないため、崖からの転落回避が早く確認されるほど、米国債売り戻しに伴う米金利上昇圧力は大きいものになりそう。いわゆる「安倍円安」から「安倍円高」へ転換した場合、その歯止め役としても注目されそうです。

 ところで、実際に米金利上昇となった場合、目処はどのように考えたらいいでしょうか。

<資料2>が一つの手掛かりになるのではないでしょうか。スペインを主役とした欧州債務危機が、世界の金融市場における主役となった今年春から夏にかけて、米金利はスペイン金利ときれいな逆相関関係が続いてきました。ところが、9月以降、両者のかい離が目立つようになりました。スペイン危機の後退に伴うスペイン金利低下に対し、米金利上昇が追随しなくなったわけですが、このかい離こそ、いわゆる「財政の崖」への警戒感が主因との見方が基本でしょう。

※<資料2>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=357846
<資料2>
 その意味では、「崖」からの転落が回避されるとなれば、このかい離を縮小する動きに向かう可能性があります。つまり、米長期金利は一気に2%を超える急騰に向かう可能性があるでしょう。ドルの行方を考えるうえでも重要な鍵を握ることとなりそうです。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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