亀井 幸一郎氏「有事の金」と言われるように、戦争のたびに金は高騰を繰り返してきた歴史を持つ。

現在、中東ではイランが核開発を進め、ホルムズ海峡の封鎖を匂わせるなど緊張が高まっている。「有事の金」の不文律に従えば絶好のチャンスにも思えるが、マーケット・ストラテジィ・インスティテュートの亀井幸一郎氏の見方はやや趣が異なる。

「有事で金価格が上がるのは事実です。ただ、一般の個人投資家は高値で摑む可能性が高いので、手を出さないほうがいい。『噂で買って、事実で売る』という言葉通り、1月5・6日にはNY市場ですでにヘッジファンドの大規模な買いが入っている。いざ有事が起きて価格が上昇し、一般の人が買ったタイミングで売りをぶつけてくる算段でしょう。中東の有事を想定して買うのなら、もう遅い。そもそも『有事の金』という言葉の性質が、ソ連が崩壊して変わった。米ソの2大超大国が対峙し、地域紛争に間接的に関与していた頃にはこの言葉も生きていたのですが」

確かに、ソ連のアフガン侵攻やイラン・イラク戦争では金が暴騰したが、ソ連崩壊の際の上げ幅は以前に比べ控えめだった。


金の史上最高値が真に意味するのはドルの史上最安値





金の国際価格はドル建てだ。日本から見れば、金価格が動かなくても、円安に振れれば実質的に金価格は上昇する。

「日本では超円高で上昇の恩恵が相殺されている……。今後、円安に向かうと見るなら、今は仕込み時と言えます。また、アメリカがQE3に踏み切るかどうかで金価格の先行きが決まってくる。FRBのバーナンキ議長は、インフレよりもデフレを恐れている。金融緩和が十分でないと考えれば、念のためにマネーをばらまくことを考える人です。マネーの供給量が増えれば、当然、金は上がります(上図参照)。そもそも、昨年に記録した金の史上最高値の真の意味は、金に対してドルが史上最安値を記録したということ。だから、新興国の中央銀行はこぞってドルを減らし、金の保有率を高めているわけです。史上最高値をつけた後、400ドルも暴落した金相場にはヒビが入ったが、強気一辺倒の以前に比べ、強気と弱気が混在した相場のほうが長続きする。依然として上昇する条件が目白押しなのが現状なのです」

つまり、これからは「ドル安の金」時代ということだろう。ちなみに、金に投資するには、現物、純金積み立て、金ETF、そして先物など、さまざまな方法がある。「月々3000円と少ない資金でも始められる純金積み立ては、放ったらかしでいいが、少額ゆえに買い付けのコストがどうしても割高になるのが難点。それなら、実物資産である金を実感できる金貨の購入をお勧めします。1オンス金貨はおよそ16万円と少々高いが、1/2オンス金貨なら8万円ほどで買えます。今は株や債券はもちろん、通貨さえ発行体リスクを伴うが、金は発行体を持たない〝無国籍通貨〞なのでこうした信用リスクとは無縁ですしね」

金の現物以外に投資するのなら、金の現物を買うのと同じとも言われる金ETFが適しているが、注意すべき点がいくつかある。

「金現物と交換できない、裏付けのないETFもあります。また、現物と交換できても、億単位のETFの保有が条件だったりしますが、東証上場の純金上場投資信託『金の果実』は1㎏から現物との交換が可能です。ETFなので2万円程度から始められ手軽です」


【亀井 幸一郎氏】
マーケット・ストラテジィ・インスティテュート代表取締役。貴金属アナリスト。金の国際調査期間・ワールドゴールドカウンシルを経て現職。講演、執筆と幅広く活躍。著書に『純金争奪時代』(角川SSC新書)など