吉田 恒氏 一頃に比べてかなり円安が進みました。これは、安倍自民党総裁のお陰でしょうか。実は、「真の主役」は違うかもしれません。


◆投機円売りが5年ぶりの拡大


 <資料>をご覧下さい。これは、CFTC、米国の商品先物取引委員会というところのデータで、為替相場などを大きく動かす投機筋の代表格であるヘッジファンドなどの日本円の取引を反映しているとされるデータです。

※<資料>はコチラ⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=341260
<資料>
 この棒グラフが下に伸びるとドル買い・円売りが拡大しているといった意味になりますが、最近にかけてそんなドル買い・円売りが2007年以来、約5年ぶりの水準まで拡大してきたことがわかるでしょう。つまり、最近にかけての円安は、ヘッジファンドなど投機筋のドル買い・円売りが主導した結果ということになるでしょう。

 ほらやっぱり、自民党の安倍総裁が、日銀法を改正してでも、前例のない金融緩和を日銀に行わせると発言しているため、それを材料に投機筋が円売りを急拡大させたことから円安になっているということなら、やっぱり円安は安倍さんのお陰ではないか、そんな声が上がるかもしれません。

 ただ、日銀の金融緩和はここ数年繰り返されてきましたが、その中では投機筋の円売り拡大に限界があったのが、最近は5年ぶりの円売り拡大となっているのは、本当に安倍さんのお陰ということだけでしょうか。


◆金利差なき円売り拡大を後押しした制度変更


「日銀は先月(10月)30日の金融政策決定会合で、金融機関の貸出増加額に応じて0.1%の長期固定金利で最長4年の貸し出しを行う『貸出増加を支援するための資金供給の枠組み』を決定した。資金供給の総額に上限は設けず、無制限」

 「新制度により超低利で円資金を調達し外貨で運用する円キャリー取引が増えるとの見方が出ていることについて、(日銀の)同理事は『結果としてそうなる可能性はある』と言明」

 これは、11月上旬に世界的な金融情報ベンダーであるブルームバーグが報じた記事です。この中にあった「円キャリー取引」とは、簡単に言うと円売りです。つまり、これまで見てきた5年ぶりの投機円売り拡大は、この記事の見通し通りの結果であり、その根本には日銀の貸出制度見直しがあったということになるでしょう。

 2008年以降、天下のヘッジファンドでも円売り拡大に限界があったのは、日米などの金利差が急縮小し、円売りの維持、拡大が困難になった点が大きかったでしょう。そんな「金利差なし」の構図が大きく変わったわけではない中でも円売りが5年ぶりに拡大してきたのは、日銀による新貸出制度という制度変更の影響があったということではないでしょうか。

 安倍総裁は、円高を是正できなかった日銀の無策を批判し円安が進む展開となってきましたが、実はそんな日銀の10月末の政策決定こそが円安になっている「真の主役」の可能性があるとすれば、とても皮肉な話ではないでしょうか。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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