【週刊チキーーダ!番外編】藤原敬之×飯田泰之対談



― 日本人はなぜ、投資と戦争が下手なのか? Vol.2 ―


 ファンド・マネージャーとして、累計5000億円を運用してきた藤原敬之氏が、「波多野聖」名義で著した『銭の戦争』。この歴史経済小説は、エコノミストの飯田泰之もお気に入り。ということで、『週刊SPA!』連載「週刊チキーーダ!」で、あいまみえた2人。「お金持ちになるためには?」がテーマの対談だったが、緊縮財政・アンチデフレ・清貧嫌い・高橋是清ヲタ・歴史好きという共通点から、話はあっちこっちで盛り上がり。そのほぼ、全文を「週刊チキーーダ!番外編」として、紹介する。

⇒Vol.1「日本人は投資が下手な理由」 http://nikkan-spa.jp/313210

藤原敬之氏藤原:そして、やっぱり私、日本のものづくりの根底を変えてしまったのはEMSだと思うんです。最終製品まで作り込んでいくというビジネスモデルが崩れたところから、日本の製造業は厳しくなった。

飯田:かつては、複雑な製品ほど社内、系列での移管生産でないと最終製品にならなかった。自分たちのファミリーでやれていたというのは大きいですよね。

藤原:いろんな意味でクオリティをコントロールできたけれど、今は如何に、海外の対等以上のパートナーと組むかというのが重要になっている。このネゴシエーションがまた、日本人は苦手。彼らを相手にするには、こちらが強みを持って、いざとなればクロスカウンターを打つつもりでいかないと、議論にもできない。そして英語力の問題もあります。なぜ、台湾の人間があんなに強いのかというと、英語はめちゃくちゃ上手ですからね。台湾企業のトップは皆、パーフェクトな英語を話します。新しいビジネスモデルを成功させるための、コミュニケーション能力なりインターフェイスを持っていたということです。

飯田:台湾だと、中間管理職以上はほとんど英語が通じますよね。飲食店でもマネージャーは英語しゃべれたりする。その一方で、街を歩いている人は、word by wordの簡単な単語すら通じないですけどね。

藤原 その辺は見事ですよね。だから、本当に日本にとってはいろんな意味で厳しい時代だと思いますよね。

飯田:今、日本の雇用はホワイトカラーの募集は増え続けているので、これからは管理や企画、営業くらいしか日本人がすることはないのではないでしょうか。

藤原:ただ、日本人の管理、企画、営業はできると思います。が、組織が多国籍軍になったとき、それを管理できるかというと、それがうまくできないんです。
 私もかつて、30人近い外国人の部下を持ったことがありますが、こういうと何ですが、本当に彼らは簡単に手の平を返してくる。だから、こちらの圧倒的な力を示しておかないといけない。そのために、私が意識したのは、フェアであること、ビジョンを示すことです。特にビジョンを示すのは重要で、日本人なら「これ、やっておけ!」で通じますが、外国人はどんなに目先の仕事でもやらないんですよ。「キミにとって、この仕事をしないということは、こういうことになる」「このプロジェクトが完成し、成功したらキミの将来はこうなる」と示さないと動きません。

飯田:だから、この仕事をすることが必要なんだ、と。

藤原:そうです。逆算でないと動きません。でも、もし、その目標やビジョンに納得できたら、ハンパなく仕事をします。そして結果につなげていく。

飯田:確かに、向こうのリーダーシッププログラム組って、バカなの?って思うほど、仕事しますよね。一方で、一般事務員は、びっくりするほど仕事をしない。

藤原:あと、同時に国民性もあるんですよ。イタリア人って、一般的には遊んでばかりのイメージだと思いますが、働くヤツはめちゃくちゃ働きます。そして、ざっくりとした指示でもやってくれる。でも、ドイツ人は、やらないですね。キチンと具体的な説明をしないとやらない。これはおもしろかったですね。

飯田泰之飯田:知人に日本に長いオーストリア人がいるんですが、彼に「日本人とイタリア人は性格が合うはずだ」って、言われたことがあります。アバウトでもいける国民性。逆にチマチマ細かく言われると、「ああ、もううるさい」ってなる(笑)。あと、僕は共著者の影響でここ数年ベイズ統計学が大好きなのですが、不思議なことに、ベイズ統計学って、日独伊旧枢軸国が強いらしいです(笑)。

藤原:結局、一番、やりやすいのはアメリカ人ですね。僕はアメリカ人とイギリス人のカマし方というのは会得していまして(笑)。アメリカ人のインテリって、数学などには非常に強いが、教養がない。ですから、ミーティングの合間などに、オスカー・ワイルドの詩やクラッシック音楽の話をはさみこむと、「おおぉ」となる。また、イギリス人は逆に数学に弱いので、シグマやインテグラルを使って概念説明をすると、尊敬の眼差しになる(笑)。ビジネスの交渉でも最初にアホだと思われたらアウトです。こちらを認めさせる、リスペクトさせる方法っていうのは、ありますね。まあ、でまかせもいいとこなんですが(笑)。

飯田:こちらができる!と思われると、ちょっと手を抜いたら見透かされるかもと、自分から努力したり、情報提供してくれたりしますからね。

⇒Vol.3「現状打破はアメリカに戦線布告!?」に続く http://nikkan-spa.jp/313282


【藤原敬之】
1959年、大阪府出身。一橋大学法学部卒業後、農林中央金庫に入庫し、国内および米国指株式を運用。移行、野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)、クレディ・スイス投資顧問(現アバディーン投信投資顧問)、日興アセットマネジメントなどで、ファンド・マネージャーとして活躍。運用した額は累計で5000億円。著書に『日本人はなぜ株で損をするのか?』(文春新書)、波多野聖名義で、小説『銭の戦争』『疑獄小説帝人事件』(扶桑社)がある。


【飯田泰之】
1975年、東京都出身。東京大学経済学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得中退。駒澤大学経済学部准教授。著書に『脱貧困の経済学』(共著・ちくま文庫)、『ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方』(角川oneテーマ21)『世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ!』『飯田のミクロ 新しい経済学の教科書』(光文社新書)


<構成/鈴木靖子 撮影/山川修一>