吉田 恒氏 5日に発表された米9月失業率が「驚きの改善」となったことで、一部では「失業率の操作」疑惑も流れているようです。超大国・米国の意図的「操作」はありえないと思いますが、最近の雇用統計の結果は、偶然としても大きな影響をもたらした可能性はあるでしょう。


◆米雇用統計に関する「二つの」操作疑惑


 9月の米失業率は、8月の8.1%から事前予想では8.2%に悪化するとの見方でしたが、結果は7.8%への大幅改善となりました。7%台の失業率は、実に2009年1月以来、つまりオバマ政権スタートのところまで一気に失業率は改善したわけです。

 この「失業率サプライズ」に、かつてカリスマ経営者とされた米ゼネラル・エレクトリック社(GE)前会長のJ.ウェルチがツイッターで「操作疑惑」を指摘し、一部で大いに話題となりました。

 11月大統領選挙が1か月後に迫ったタイミングでのこの「失業率サプライズ」は、あまりにタイミングがよすぎるというわけです。

ジャック・ウェルチ氏
【左図】事前の予想に反し大幅に改善した米雇用統計発表直後、GE前CEOジャック・ウェルチ氏はツイッターで、「信じられない雇用の数字だ。シカゴから来た連中はなりふり構わない。討論がうまくできない、だから数字を変えるというのか」とツイートした



 経済統計の「操作」疑惑は、先進国以外では取り沙汰されることがあります。ある経済統計が数か月後に大幅改訂されるのは、政策決定に都合のいいように「操作」したものを、後になってから修正するためであるといったことがまことしやかに囁かれてきました。

 さすがに、超大国の米国でそのような統計操作はありえないと思いますが、それにしてもこの「失業率サプライズ」が、結果としてオバマ再選にとって絶好の追い風になった可能性は高いでしょう。

 ところで、米雇用統計で失業率以上に注目を集めることも少なくないのがNFP、非農業部門雇用者数というデータです。この8月の結果が、前月の発表から大きく修正されました。こちらも、「第二の雇用統計操作疑惑説」が囁かれてもおかしくないような、偶然としても政策決定への影響の大きなものだったのではないでしょうか。


◆雇用統計サプライズは歴史を変える?!


 8月NFPは9月7日に前月比9.6万人増と発表されました。当時は、翌週に予定されたFOMCで追加緩和を議論するうえで、この8月NFPの結果が、事前予想の12万人より良いか悪いかが重要な意味を持つとして大いに注目されていましたが、結果は予想より悪かったわけです。

 その後行われたFOMCでは、量的緩和第三弾、QE3を決定しましたが、内容的には事前の予想より強力な、「スーパーQE3」となりました。果たしてNFPが予想より悪い結果に終わった影響も客観的に見て小さくなかったと思います。

 ところが、今回、その8月NFPは14.2万人増へ大幅に上方修正されたのです。「IF」ではないですが、この結果が1か月前に出ていたら、8月NFPは事前予想の12万人よりよかったわけですから、それでも果たして「スーパーQE3」となったでしょうか。

「スーパーQE3」も、9月「失業率サプライズ」も、これまでのところはオバマ再選を後押しする要因になっていると思います。少なくとも、「スーパーQE3」をやらず、「失業率サプライズ」もなかった場合より、オバマ大統領に優位に働いていることは確かでしょう。

 その意味では、対立する共和党側からは操作疑惑、ねつ造説があがるのも当然でしょう。私は意図的に操作したとは思いませんが、結果的に歴史に影響を与えた「雇用統計サプライズ」の可能性はあると思います。(了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。

2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。

著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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