吉田 恒氏 今のところ、ドル安・円高の最高記録は、昨年10月末の75円台です。その意味では昨年11月から新たなドル高・円安基調が展開している可能性はあるわけですが、そうだとしてもこれまでで最も遅い、「最遅ペース」のドル高・円安のようなのです。


◆今回のドル高・円安は「最も遅い」ペース


 <資料1>は、過去20年間で4回あったドル高・円安について、ドル高開始から1年後までを調べたものです。この中で、最も速くドル高が展開した、「最速のドル高」は、一年経過したところで、すでにドルは円に対して3割も上昇していました。


※<資料1>はこちら⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=303677
ドル高


 一方、「最遅のドル高」は、一年経ったところでも、まだドルの上昇率は5%程度にとどまっていました。

 こんなふうに、同じドル高でも、一年経過した時点を比べると、かなり差があったことがわかるでしょう。

 ちなみに、過去4回のドル高の平均を計算すると、ドル高開始から一年経過したところでの対円でのドル上昇率は17%程度でした。今回、昨年11月の75円台からドル高が始まったとして、今年11月に87円程度で推移しているというのが、「平均のドル高」のイメージといえそうなわけです。

 ただ、現実のドル相場は、そんな「平均のドル高」ペースを今のところかなり下回り、むしろ「最遅のドル高」ペースでの推移になっています。ではその原因は何でしょうか。


◆10‐12月に「豹変」する米大統領選挙相場のジンクス


 <資料2>の赤のグラフは、米長期金利からインフレ率を引いた米実質長期金利ですが、過去最低水準での推移となっていることがわかります。この歴史的な米金利の低下が、ドル高の足を引っ張り、「最遅のドル高」をもたらしている一因であることは間違いないでしょう。


※<資料2>はこちら⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=303678
米金利,ISM


 ただ問題は、その歴史的な米金利低下の原因です。<資料2>を見ると、それは米景気では説明できない「異常な現象」といえそうです。では、そんな米景気で説明できない米金利低下をもたらしたのは何か。

 <資料3>は、今年3月以降の米長期金利に、欧州債務不安を象徴するスペイン長期金利を軸を反転させて重ねたものです。このように両者は逆相関関係が続いてきたことがわかります。つまり、米景気での説明の範囲を超えた米金利低下は、欧州不安を受けた動きの可能性があるわけです。


※<資料3>はこちら⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=303679
米金利,スペイン金利


 さて、10月に入りました。4年に一度の米大統領選挙年のドル/円は、選挙前までは小動きですが、選挙前後になるととたんに動き出すといった傾向があります。選挙年の10‐12月のドル/円の値幅は、7-9月の倍以上に拡大するパターンが少なくとも調べてみた過去3回にはありました。

 そんな「大統領選ジンクス」が機能して、これまでの小動きが嘘だったような展開が起こるのか、そしてそれは「最遅のドル高」がペースアップする展開なのか。それは、これまで述べてきたことからすると、欧州危機動向を受けた米金利が最大の鍵を握っているのではないでしょうか。(了)



【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業。大手投資情報会社の編集長、代表取締役社長などを歴任。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任した。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。

2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。

著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など

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