吉田 恒8月初めに行われた、米国の金融政策を決める会合であるFOMC(米連邦公開市場委員会)の会議録などをきっかけに、9月FOMCでの追加緩和、いわゆるQE3観測が急浮上してきたようです。QE3実施となったら、ドルや金利は一段と下がるのでしょうか。それを考えるうえで、前回の量的緩和、QE2のケースを参考にしてみましょう。2010年11月にQE2が実施された後は、むしろドル高、米金利上昇といった逆の展開となっていました。



◆QE2の後は米金利上昇・ドル高



 2010年11月、QE2が実施された前後のドル円の動きを調べてみると、QE2実施後はむしろドル高・円安となっていました。では、なぜFRBが追加緩和したのに、ドル高・円安になったのでしょうか。

 それは追加緩和したものの、一方で米金利、この場合は政策金利ではなく、市場金利のことですが、この米金利は上昇したといった意味では、ドルの上昇も当然だったのかもしれません。QE2前後の米10年金利の推移を調べてみると、QE2実施の後からむしろ米金利は反転、上昇へ向かうところとなっていたわけです。

 では、なぜこんなふうに、QE2といった追加緩和に動いたのに、米金利上昇、ドル高となったのか。その一因は、やはり米景気が改善に向かったということがあったのでしょう。たとえば、代表的な米景気指標の一つであるNFP(非農業部門雇用者数)は、QE2実施前まで、4か月連続で前月比マイナスだったのですが、QE2実施の後からは、前月比プラスに転じました。

 政策判断は、それが異例な場合ほど、ある程度のコンセンサスにも時間を要するため、後手に回るリスクが高まります。QE2の場合もそれに近かったのかもしれません。追加緩和が後手に回り、すでに景気が改善に転じているなら、追加緩和はその景気改善を後押しした結果、金利はむしろ上昇に向かったということでしょう。

 その意味では、今回の場合も、ドルや金利の反応を考えるうえでは、ある意味ではQE3を実施するかということ以上に、最近の米景気指標の改善が9月FOMC前後にかけて続くかが重要な意味を持つのではないでしょうか。

 8月に発表された米7月景気指標の結果は、予想より良いものが増えました。それが9月にかけても続くようなら、QE3をやってもやらなくても、米金利は上昇、そしてドル高・円安に向かう可能性が出てくるでしょう。 (了)


【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。

2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。

著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など



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