この資金「今となっては、ということになりますが、12月21日にECBが期間3年の1回目の資金供給オペ(4890億ユーロ)を実施したことで、欧州の金融機関の資金繰り懸念が後退。これにより世界的なリスク資産へのマネー回帰が促されました」とは、フィスコの小川佳紀氏。供給を機にリスクオン(投資家が積極的にリターンを求める投資行動に出ること)の流れが生まれ、追随するように世界の中央銀行が金融緩和策を発表。世界の株価指数は大きく上昇した。

「実際、日銀なんかは国債の買い取り枠を増やしただけなんですが、為替の円高を食い止める効果はあった。その結果、昨年は世界で一番ダメな指数だった日経平均株価が、昨年の反動もあるんでしょうが、今年は世界でもトップクラスのパフォーマンスです」(小川氏)

2月末には、ECBが2回目の期間3年の資金供給オペを実施。リスク選好の流れは加速し、過剰流動性相場は続いている。

「資金の流動性が高まり、お金が余るのが過剰流動性相場。余った資金が原油などの商品市況や株に流れ込むため株高になる。一方で商品市況が活況になることは物価高にもつながり、中国などでは再びインフレが懸念されるでしょう」

世界の株価指数が上昇した一方で、為替はどうだったのか?

「為替は、ECBの資金供給オペを機にユーロの通貨量が増えたことでユーロ安が加速。年初には円高が一気に進み、ユーロ/円は一時97円台まで下落しました」

その後、ギリシャ問題の進展によるリスク回避姿勢の後退や日銀の金融緩和策で、トレンドは円安に変わる。また商品市況の活況は、豪ドルや南アフリカランドなど資源国通貨の上昇を後押しした。

「リスクオフからリスクオンに変わるなかで、敏感に反応するのは先進国よりも新興国。感覚的には同じ材料でも、先進国の倍近く織り込むのが新興国です。豪ドルなどの資源国通貨は、自国の経済状況とは関係なくカネ余りの流れのなかで買われています。とはいえ、原油先物の値動きをよく見てみるとわかるのですが、期近の価格は上がっていても期先の価格はそれほど上がっていません。そもそも資金供給オペとは、ある日一気にマーケットにお金が増えるのではなく、段階的に増えていくというもの。そういった意味では、期近ではなく期先の価格が上昇しなくてはいけないんですが、そうなっていないところを見ると、強い資源国通貨ですが注意は必要です」

そもそも金融緩和策は、根本的な解決策ではない。

「各国がこぞって実施している金融緩和策ですが、これはあくまでも応急処置。たとえるなら出血箇所に絆創膏を貼っているようなもの。今は絆創膏が貼られたという安心感でマーケットは落ち着いていますが、血が止まったわけではない。例えば今年、ユーロ圏はマイナス成長が予想されているなかで、"実体経済が非常に悪くなっている" などの報道が出れば、絆創膏の効果がなかったとして、再びマーケットは混乱するでしょう」

マーケットが冷静になったとき、実体経済が思っているほど回復していないことがわかると流れは一変する。再び "ポルトガルやスペインは大丈夫か?" といった不安が増大する可能性があることを、頭の片隅に留めておきたい。




小川佳紀 氏

フィスコ株式リサーチ部アナリスト。中堅証券会社を経て現職。中小型株や新興市場株の分析など幅広く担当する若手のホープ



-----------------
この記事はYenSPA'12年春号に掲載されたものです。