どうすれば自分は勝てるのか?常に考え続けることが必要だ



「最初に株を始めるときに、余計な先入観を持つのがイヤで、本や雑誌で手法を研究せずに、株価の動きを見ながら、どうすれば勝てるのかを自分なりに考えました。それでずっと株価と板の動きを見ていたら、どう考えても『理にかなってない注文』を出している人がいて、すごく違和感があったんです。あえて理にかなってないことをするには理由があるはずだと考えたら、その理由がわかった。違和感の正体は“見せ板”。そこで見せ板を出している人の思惑や、その見せ板にダマされる投資家の心理を読んで売買すれば勝てるんじゃないかと考えたわけです」

そう語るのは、投資歴7年弱のデイトレーダー・けむ。氏。チャートで売買する投資家が多いなか、注文株価と株数が表示される「板」だけを見て売買する「板読み」という手法で、これまでに約1億7000万円を稼ぎ出した。

ちなみに「見せ板」とは、どういうものなのか?

「例えば5万株くらいの買い注文が並んでいるなかで、現在値より3ティック下に10万株の買い注文が突然現れるときがあります。場中の動きが見られない人が事前に買い注文を出しているならともかく、すぐにその銘柄を買いたいなら、3ティック下で買い注文を出してもなかなか買えないから意味がない。でも、よく見ていると株価が上がって上の板が食われると、10万株の買い注文が消えるんです。ということは、買い注文が厚いと思わせて、実は自分が現在値よりも高い価格で出している売り注文を買わせたかったんです」

気づけばチャートをほとんど見ることなく、板だけを見て売買する手法を自ら確立したという。

板を見てわかるのは、その銘柄の需要と供給(=需給)と、売買する投資家の感情だ。しかし、板だけを見ていては、前述のように買う気がないのに出している「見せ板」にダマされてしまうことも。

「板に加えて、歩み値(売買が成立した記録)を見ることで、実際に板の注文が成立したのか、注文が消えただけなのかがわかります。また、同じ1万株が売買されたとしても、それが1万株を大口が買ったのか、1000株ずつ10人の小口が買ったのかもわかります。基本的には大口が入っていれば、大口の思惑を最優先して、大口についていくトレードをしますね。それと小口の個人投資家がいっぱい買った価格帯はしこりになりやすい。例えば、株価がいったん下落して個人投資家が買った株価まで戻ってくると、そこで買った個人投資家が一斉に売ろうとするので売り注文が多く出て上がりにくくなる。そういうこともイメージして売買しています」

つまり、板や歩み値を見ながら頭の中にチャートを描き、そのチャート上に価格帯別出来高を思い浮かべているのだ。

しかし、東証が昨年導入した売買システム・アローヘッドは、以前のシステムよりも高速化が進み、また機関投資家のアルゴリズムトレード(自動売買ステム)も増えたため、板読みは不利では?

「確かに、アローヘッドが導入される前までは歩み値が3秒に一度しか更新されなかったので、一度に100銘柄くらいの板を監視できたんですが、今は歩み値がリアルタイムで更新されるので集中して見られるのは2〜3銘柄に減りました。一瞬でも目を離すと流れてしまって売買の状況がわからなくなるんです。それに『こうなったら買おう』と思っていたら、買おうと思った瞬間にはアルゴに先回りされてしまって買えないことも多くなりました。地合いの悪化や出来高の減少もあるんですが、昨年は一昨年の半分くらいしか稼げなかったので影響がないとは言えないですね。売買手数料も昔は月額2万円なんてところもあったのに、今は1か月に50万〜100万円くらいかかってますから、環境は厳しくなってますね」

個人投資家に不利な状況が進み、実際に勝てなくなって引退してしまうデイトレーダーも多いが、けむ。氏は「でも、一方では以前より詳細な約定記録がリアルタイムで手に入るようになった。つまり情報量が増えたので、そのメリットを生かすことを考えたり、これまでよりも時間軸を長くしたり、チャートと組み合わせて売買してみたり、いろいろと試行錯誤を繰り返しています」と、トレーダーとしてさらなる進化を目指している。というのも、現在の手法はあくまでも今、彼にとって優位性がある手法にすぎないからだ。

「僕は手法自体よりも『どう考えるか』ということのほうが重要だと思っています。手法というのはあくまでもそれをどう出力するかというだけの問題で、もし板読みで勝てなくなっても、ほかの手法を学習すれば結果は出せるんじゃないか、と考えているんです」

このように「どうすれば勝てるのか」を考え抜き、それを研究することこそが「けむ。流トレード」のもっとも大切な部分なのだ。




けむ。氏

板読みで1億7000万円稼いだデイトレーダー


パンローリング社から、板読みの書籍やDVDも出している、けむ。氏。板読みのイロハや実例、板の裏の投資家心理の読み方などが解説されている。現在は、第2弾を執筆中だ