キリンとサントリーが経営統合を決めたことで、産業界は空前の経営統合ラッシュに突入しそうだ。株価には強烈なインパクトのある材料だけに、ぜひチェックしておきたい。次なる統合・再編はどこで起きるのか、経済ジャーナリストのX氏に聞いた。

「経営統合すれば、原料の仕入れ先や銀行への発言力が増し、売り先にも強く出られるメリットがあります。ついでに、合併のドサクサで人員削減もできる。経営者目線に立てば、"再編"は実においしいものなんですよ」

「合体するんですよね?」「アナルはダメだよ、君ぃ〜」ーーソッチ系の男性同士の会話ではなく、経済記者と国土交通省官僚のやり取りだ。お題は日本航空(JAL)の経営再建。

「日本政策投資銀行からの融資を受けて資金繰りはひと息ついたものの、今も経営不振から脱出できていません。そこで、全日空(ANA)による救済合併説が、今も出ては消えを繰り返しているのです」(X氏)

特に、政権を取ったばかりの民主党はJAL問題の抜本解決を図り、「弱点とされる産業政策でも実績をアピールしたい」(民主党議員秘書)と息巻いているという。両社を合併させた場合、名前をくっつけると「ANAL」。何だか乗りたくないような……。

また、マスコミ各社が「幻の特ダネ」として追うのが、昨秋に倒産した米ゼネラル・モーターズ(GM)の再建スポンサーだ。トヨタが技術協力を申し出て、「買収か」と騒がれた時期もあるが、一方でカリフォルニア州のトヨタ・GM合弁会社NUMMI(ヌーミー)の閉鎖を決めている。トヨタはGMに手を貸すより、自社の業績改善を急ぐスタンスをはっきりさせている。

「マークされているのは、日産自動車ですね。倒産寸前のところを仏ルノーの軍門に下ったのが10年前。4|6月期は、トヨタの赤字を横目に、日産は黒字化を果たし、逆境下での強さを見せつけました」(同)

そのルノー・日産連合が、GMをも手中に収めるというのだ。

「日産再建を成功させたカルロス・ゴーン会長は、業界きっての野心家として知られています。もし実現すれば、日産の株価が上がるばかりか、産業史の1ページに残るでしょうね」

それ以外に可能性が高そうなのは、子会社整理に伴う買収だとXは睨んでいる。

「金融庁や東証は『親子上場』に対して厳しい目を向けています。上場子会社の経営者が株主ではなく、親会社の利益を優先させかねないからです。さらに、子会社といえども社外の株主がいれば、意見を聞いたり、配当を出したりする必要があります。経営の意思決定に時間がかかり、グループ外への資金流出にもなるということで、親子上場は解消される方向にあるでしょう」

例えば電機業界では、パナソニックが旧松下電器時代から、松下通信工業の吸収など子会社の整理を進めている。日立製作所も7月に日立マクセルなどグループ5社をTOB(公開買い付け)で完全子会社化を決定。続けて8月末には日立建機が上場子会社のTCMを買収すると発表しており、グループ企業の大再編が突然始まった。

ますます増える予感の"経営統合ラッシュ"を見逃すな。



X氏
大手証券会社を経て、フリーの経済ジャーナリストに。
幅広い人脈と圧倒的な情報網で、あらゆる金融経済事情に精通する