原発は差別の上に成り立っている



──もともと原子力の世界に夢を持って入ったそうですが、反原発に転じたきっかけは何ですか?

【小出】 私は『原発のウソ』の中で「原子力のコストは安くない」と主張しています。しかし、仮に原発のコストが安かったとしても、認められません。高かろうが安かろうが、代替エネルギーがあろうがなかろうが、即刻止めるべきだと思います。それは、「原発は差別の上に成り立っている」ということに気付いたからなんです。

──それはいつのことですか?

【小出】 ’70年10 月23日のことでした。

当時、私は東北大学原子核工学科で学んでいたのですが、女川に原発を作るという話が出てきました。電力の大消費地である仙台の近くに造れば効率のよい原発を、なぜ人口の少ない女川にわざわざ造るかといったら、都会では引き受けられないんだ……と気づいたのです。そこで、現地で反対集会があるというので行ってみたんです。

電気がほしいから、危険も含めて都会で引き受けるというなら、まだ認める余地はあります。でも、電気はほしいけど危険だから田舎に押しつけようという考え方がどうしても認められないんです。その日以来、私の原発に対する態度は180度変わりました。

「立場の弱い者が、より多くの負担をしなければならない」ということに気がついたのです。

例えば、現場で大量に被曝する仕事のほとんどは孫請け、ひ孫請けといった会社に雇われた人々が担っています。一方で、多くの電力会社本体の社員や役人は、比較的安全な場所で仕事をしています。

発電所の現場だけではありません。私はインドのウラン鉱山汚染も調べに行きましたが、採掘現場でも、貧しい労働者ほど被曝させられている状況を目の当たりにしました。

──原発を動かす前から、その差別構造は始まっていると。

【小出】 日本もかつてはウラン鉱山の開発を行ってきました。岡山県と鳥取県の境にある人形峠です。

’55年からウラン鉱山の開発が行われていたのですが、全くコストにあわずに10年くらいで撤退してしまった。鉱山開発だけでもたくさんの労働者が被曝したのですが、閉山後にウラン残土の問題が持ち上がりました。放射能を帯びた大量の残土を、国は処理できなくなったのです。

──結局、その残土はどうなったのですか?

【小出】 最終的には、アメリカ先住民の居住地域に持って行って処分しました。つまり、アメリカの中でも立場の弱い地域に公害を輸出したのです。国は「その地域にあるウラン精製所で精製する」と言い訳をしました。しかし、持って行った残土からウランを精製しても、売価で100万円ほどにしかなりません。しかも、それで処分できたのはほんの少しにすぎず、いまだに残土の大部分が現地に放置され、周辺環境を汚染しています。

──そして、次はアメリカと組んでモンゴルへ……。

【小出】 そうです。次はモンゴルに放射性廃棄物、つまり「死の灰」を持って行こうとしているのです。日本はこれまで累計で広島型原発120万発分の死の灰を出してきました。これはどこかに押し付けて「なかったこと」にするのではなく、私たちの責任で何とかしなければならない問題です。






小出裕章

'49年東京生まれ。京都大学原子炉実験所助教。原子力を学ぶことでその危険性に気づき、伊方原発裁判、人形峠のウラン残土問題、JCO臨界事故などで、放射線被害を受ける住民の側に立って活動。原子力の専門家としての立場から、その危険性を訴え続けている。著書に『放射能汚染の現実を超えて』(河出書房新社)など

原発の危険性をわかりやすく語った小出氏の最新刊『原発のウソ』。
神保哲生氏、宮台真司氏をホストに「マスコミが報じない震災・原発事故の事実」を伝える新刊『地震と原発 今からの危機』にも小出氏が登場。(ともに小社刊)
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