原子力村の中心で「危険だ」と40年間も叫び続けてきた研究者、
小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー



福島第一原発の事故以来、にわかに脚光を浴びるようになった科学者、小出裕章助教。5月23日には参議院に参考人として出席し、原発の不合理性を訴えた。彼が40年もの間、原子力の専門家として警鐘を鳴らし続けてきた原動力とは何なのか──




──福島の原発事故は、いまだに収束の気配を見せていませんね。

【小出】原子炉の中に入っている核燃料は、「ペレット」というセトモノなんです。100tにものぼる瀬戸物が溶け落ち、圧力容器の底を溶かして下まで落ちてしまっているんです。東京電力はこの事態を想定するマニュアルを持っていません。今回のケースは「想定不適当事故」、つまり「絶対にありえない事故」とされてきたからです。

──東京電力(以下東電)は当初、メルトダウンしていないと発表していましたが、2か月以上も経って訂正しました。

【小出】今は、燃料自体が溶ける「メルトダウン」から、圧力容器と格納容器の一部を溶かして燃料が落下する「メルトスルー」までいってしまったようです。事態はまったくよくなってはいません。たいへん厳しい状況が今後もずっと続くでしょう。

──国が作業員の被曝許容限度を250ミリシーベルトにまで上げましたね。

【小出】作業員の通常時被曝許容限度は5年間で100ミリシーベルトでした。ただ、異常事態が起きたときには例外的に年100ミリシーベルトまでは許すことにされていました。それが今回、一気に2・5倍まで引き上げたのです。現場の放射線量が非常に高いので、従来の基準では短時間しか作業ができず、人員もすぐに足りなくなってしまう。そこで“緊急措置”として、その無理を現場作業員に押しつけているのです。非常に心が痛みます。

──作業員だけでなく、周辺住民の基準値も、それまでの1ミリシーベルトから20ミリシーベルトまで引き上げられました。

【小出】20ミリシーベルトというのは、従来は私も含めて放射能にかかわる仕事をしている人たちにとっての基準でした。「給料をもらうかわりに、ここまでの被曝はガマンしろ」という数値。それを、放射線の感受性が強い胎児や子供にまで同じように適用するということは、絶対にしてはなりません。

──農作物や海産物の汚染も広まっています。

【小出】海に関しては、海藻を調べなければいけない。海藻は回遊しませんから、定量的なデータが取れます。なぜこれをしないのか疑問に思います。いずれにしても、莫大な量の放射能が海に流れたのは事実。農作物からも次々に放射能が検出され、相当広範囲にわたって汚染されたことがわかります。

しかし、汚染された食べ物を拒否してしまえば福島の農漁業は壊滅してしまいます。そこで、少々の放射能は私たち年齢が高い人たちが受け入れるべきだと思うのです。私は60歳を過ぎましたので、放射線の感受性は乳幼児の1000分の1、30代と比べても数十分の1ですから。映画に「18禁」というのがあるように、食べ物にも「50禁」「60禁」といった規制を作ればいいと思います。

安全な食べ物をみんなで奪い合ってしまえば、汚染された食べ物はお金のない側に回っていきます。チェルノブイリ原発事故に日本が禁輸措置をしたとき、汚染された食べ物は食料不足の貧しい国々に流れていきました。学校給食などはお金がかけられませんから、安全な食べ物が回って来にくくなるでしょう。私たち大人には、これまで原発を容認してきた責任があります。しかし、子どもたちには何の責任もないのですから。

──同様の理由で、シニア決死隊(福島原発暴発阻止行動プロジェクト)にも志願していらっしゃいますね。

【小出】私は原子力に携わってきたにもかかわらず、止められてこなかった。推進こそしていませんが、その責任は非常に感じています。現地に行って私にできることがあれば、何でもするつもりです。



小出裕章

'49年東京生まれ。京都大学原子炉実験所助教。原子力を学ぶことでその危険性に気づき、伊方原発裁判、人形峠のウラン残土問題、JCO臨界事故などで、放射線被害を受ける住民の側に立って活動。原子力の専門家としての立場から、その危険性を訴え続けている。著書に『放射能汚染の現実を超えて』(河出書房新社)など

原発の危険性をわかりやすく語った小出氏の最新刊『原発のウソ』。
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