[さらば日本悲観論]
世界経済崩壊でも日本が繁栄するワケ


アメリカ、欧州、中国、韓国etc.世界経済が崩壊のプロセスを辿り、需要は激減。
しかしなぜ、日本の「国家モデル」は繁栄しうるのか?
豊富な経済指標を駆使してマクロ経済を一刀両断する三橋氏が“日本再興"の根拠を示す!




内需国家ニッポンが世界経済を救う!?





'08年10〜12月のGDP成長率は年率12.7%減となり、マスメディアは「日本終了」と大騒ぎしている。
「12.7%減という数字はミスリード。昨年10〜12月の実質成長率3.3%減が1年間続けばという数字で、あくまで仮定」

とは、日本の底力を信頼している経済評論家の三橋貴明氏。GDPの年率換算が2桁減となるのは74年以来で、連日「過去2番目に悪い」と喧伝されているが……。

「GDPという経済指標を単体で判断すると見誤ります。なぜその値になったのかブレイクダウンして分析する必要がある。今回、足を引っ張ったのは需要減による輸出の落ち込みであることは間違いないし、海外需要がすぐに回復するわけではないので、輸出の早期回復は望み薄ですが、輸出産業がダメだといって日本経済が破滅するわけではない。日本のGDPに占める輸出比率はたった15.5%です。一方の外需依存国である中国や韓国、ドイツはこの比率が約40%にも及ぶのです。日本は主要国のなかでアメリカに次いで輸出依存度の低い内需大国であることを知る必要があります」

とはいえ、日本経済の屋台骨を支えていたのは海外でモノを売りまくる自動車や電機産業だったはずである。

「大幅な輸出減はむしろ、部品や原材料メーカーの資本財が売れなくなった影響が大きく、消費財メーカーの比ではない。また、輸出の大幅減と同時に注目すべきは個人消費で、昨年第4四半期も日本の個人消費は0.4%減にすぎないのです。輸出バブルが弾けた割に、内需は底固いと見るべきです」

「円高=悪」の嘘。内需国にはプラス

日本悲観論の論拠には「日本=輸出立国論」とセットに「円高悪玉論」がある。この真偽は?

「円高でも円安でも繁栄する国家モデルは存在します。確かに、韓国のように輸出依存度が4割近くもあると、為替が動いたときの影響も大きいのですが、日本の輸出依存度は韓国の半分以下。逆に円高で購買力が高まれば、内需大国である日本にはプラスに寄与します。円高で個人消費が刺激されれば、GDP成長率は高まりますから」


それでは、なぜ「円高悪玉論」が根強いのだろうか。

「小泉改革の残滓です。構造改革の名のもと、小泉政権下では日銀が巨額為替介入により円安に誘導し、輸出産業を助けました。円安で競争力が高まり、世界の需要も堅調だったので、輸出企業は大いに収益を伸ばした。この政策は当時の状況を考えると一概に誤りとは言えないのですが、割を食ったのは日本の消費者と中小企業であったことを見過ごしてはならない」

麻生首相の舵取りと目指すべき方向は?

では、日本が今、この瞬間に取るべき対策とはなんだろうか?

「世界の需要が減少している今、もはや輸出型のモデルは通用しません。これから世界経済をリードするのは需要を持っている国。そして、その内需で先行しているのは、金融危機でも傷が浅い日本なんです。どの国もモノが売れない今、世界は日本の内需に期待している。ノンリコースなどの新サービスで不動産市場で健全なバブルを起こすことも不可能ではない。何より、日本企業や日本人は借金が少なくキャッシュが多いので、救世主となるチャンスなんです」

また、今こそ日本企業は積極的に攻めていくべきだという。

「日本への直接投資残高を見ると、日本は先進国中もっとも比率が低い。日本は輸出依存度が低いばかりでなく、直接投資の面においても鎖国状態。政府は海外からの投資を増やして、この比率を5%まで高めたいようですが、むしろ日本から海外への直接投資を今こそ増やすべき。実際、三菱UFJがモルガン.スタンレーに出資したり、第一三共がインドの製薬最大手を買収したりと、円高を利用して世界中の優良企業を買収しています。円高で日本が破滅するわけがないし、今後数年間は、他国へ積極的に投資できるのは日本だけなんです」

事ほどさように、民間は頑張っているのだ。だが、不安は政治だ。話題になるのは酔いどれ大臣や漢字の読み間違いばかり……。

「実は麻生首相がやろうとしている内需拡大に手厚い政策は唯一の正解。アメリカですらかつてない規模の財政出動を行うわけですから、日本も同様に内需を刺激すべきですなのです。また、財政均衡論者は論外としても、構造改革論者はもはや時代とはマッチしていません。国家が需要を喚起し、呼び水とすべき局面なんです」

アメリカに次ぐ内需依存国である日本。その拡大を目指すのは当然だし、今や日本の内需に世界経済の浮沈がかかっている。それにしても、三橋氏の意見は新聞やテレビの報道とは随分違うようである。

「経済評論家はデータを“横"、つまり他国との比較をしません。だから輸出が落ちこむと日本が沈没するようなことを言ってしまう。日本は輸出依存は相対的に高くないし、円高だからと絶望的になる必要がない。例えば円高だと『輸出企業が倒れる』と言うし、円安になると『日本売り』だと悲観する。じゃあどうすればいいんだという話ですよね」

内需拡大とともに議論されるのが「政府の借金多すぎ!」という財政破綻論。これも三橋氏に言わせればトンドモ論だという。

「国の借金を『国民一人あたり640万円の借金』と言い換えたりしますが、とんでもない話。政府の借金の95%以上を支えているのは日本の民間向けの国債です。つまり国民にとっては借金ではなく、国に貸している債権なんです。それを借金と言い換えるのは、消費税率を上げて自由になる税収を増やしたい財務省のミスリード。世界最大の対外純債権国が財政破綻することなどあり得ません」

最後に三橋氏は日本の国家モデルとして、「輸出企業中心から個人消費拡大に重点を置き、数年でGDPに対する個人消費の割合を60%超に高める」「企業の高度技術育成の設備投資を後押しし、新市場拡大を中心に公共投資を実施する」と呼びかけている。「日本の未来は明るい」——そう信じたほうが万事うまくいきそうだと思うのはSPA!だけであろうか。

[PR]




三橋貴明氏
経済評論家.中小企業診断士
企業の財務分析の方法論をマクロ経済の分析に応用し、話題となる。
国家モデル論から日本の進路を提示した『崩壊する世界 繁栄する日本』発売中。1470円(小社刊)