金融危機以降、起きていた"世界同時金利安"。日本は言うまでもなく0・3%の超低金利で、金融危機の震源地であるアメリカとイギリスが1%、ユーロも1・5%、カナダにいたっては0・5%と軒並み目を疑うような低金利。一体いつまで続くのか。

「そこで先陣を切って、10月に金利引き上げに転換したのがオーストラリアでした。11月も金利を上げましたが、まだ3・5%。'09年夏の7%台からすると低水準のままです。それでも先進国通貨のなかでは、際立つ高金利ですから、豪ドルが上昇するのは当然の話」

そう解説するのは、イギリスでファンドマネジャーとして活躍した「FX先生」こと杉田勝氏。

為替の値動きを予想するとき、政策金利の動向は、最重要のポイント。日本人が外貨預金を好むように、世界の投資家も金利の高い通貨がお好きなのだ。

「低金利通貨で持っているより、高金利通貨で持ちたがります。だから、今ならば豪ドルのような金利の高い通貨に世界のマネーは流れて、その通貨が上がりやすくなります。ただ、市場は常に先読みします。金利の絶対水準が高い・低いだけではなく、『これから金利が上がりそう』と思われる通貨が買われやすくなります」

となると、FXトレーダーにとって、政策金利の動向はやっぱり必須の情報。金利が上がりそうな通貨を先読みして買っておけば、中長期的に大きな利益が得られるはず。で、今後の金利の動向は?

「まずは世界で今、何が起きているかを把握しましょう。今、世界で起きているのは、日本株は例外ですが、リスク資産の高騰です。金は史上最高値を更新していますし、その他の商品市場を見ても紅茶は史上最高値、砂糖は28年ぶりの高値、コーヒーは10年ぶりの高値と軒並み暴騰しているんです。アメリカやEUの株価も好調ですし、日本にいると実感がありませんが、一時期は債券などリスクの低い資産に逃げていたお金が再び、株やコモディティなどリスク資産に流れ込んでいます」

リーマンショックで懲りたかと思いきや、まだまだ世界の投資家はリスクをとって儲ける意欲満々。日本だけが蚊帳の外なのだ。

「なぜかというと、ひと言でいえば"カネ余り"です。アメリカは量的緩和を進めています。市場に米ドルをばらまいているわけです。ところが米ドルは1%の超低金利ですから、持っていても仕方がない。有利な運用先を求めて、前代未聞のことが起きているんです。それが"ドルキャリー"です」

サブプライムローン問題が表面化するまで、FXで流行っていたのが円キャリー。低金利な円でお金を借りて高金利通貨を買い、金利のサヤを儲けるやり方だ。今起きているのは、その米ドル版。

「前代未聞なのは、その規模です。かつてない規模で世界のヘッジファンドが米ドルを外貨に換えて、金を買ったり、オーストラリア株やブラジル株を買っているわけです。米ドルは刷っても刷っても外貨に変えられてしまいますから米ドル安が進みますし、ドルキャリーでコモディティや株式市場に投資されますから、リスク資産の価格が暴騰するのも当然です」

さらに、その先を考えると、商品市場の高騰はインフレをもたらす。政策金利を管理する中央銀行が恐れるのもインフレだ。

「インフレが進めば、物価高騰を沈静化させるためにアメリカは金利を上げざるを得ない。そこでやっと、現在の世界同時金利安が終焉するわけです」

どうやら、政策金利が転換するのは「景気が上向いたから」というよりも、インフレ懸念によるところが大きい模様。気になるのは、その時期だが——。

「アメリカの中央銀行トップであるバーナンキも11月の講演で『超低金利政策を長期間維持する』と明言しましたから、金利引き上げに転じるのは早くても'10年中盤。もっとずれ込むかもしれません。バーナンキの発言に注目しておくと、金利政策転換の時期がわかると思いますよ」



■杉田 勝 氏
FXスクール「Win-invest Japan」会長。
ファンドマネジャー時代に培った独自のグローバルな情報網による市場予測に定評あり。
著書に『FX先生』(小社刊)