チャートは、'08年からのハンセン(香港)指数の推移だ。'08年10〜11月と今年3月にそれぞれ反発し、チャート的にはW底を形成している。なぜ中国市場は世界に先駆けて株価が回復したのか? TSチャイナリサーチ代表の田代尚機氏は、次のように説明する。

 「結論から言うと、昨年11月に中国政府が打ち出した4兆元(約57兆円)の公共投資による景気刺激策の効果が出てきたということです。サブプライム問題以降、対米輸出が極端に落ち込んでしまった。そこで政府は、輸出に代わるものとして、内需拡大を焦ったのです」

 不況時には財政出動して景気を浮揚させるのは、経済のイロハ。日本の国家予算とまではいかないまでも、57兆円ものカネを使うのだから、景気は好転し、株価が上昇しても不思議ではない。

 そのカネの使い道だが、大半は公共投資だ。日本で公共投資といえば、"税金のムダ遣い"のように思われているが、中国の場合、道路にしろ鉄道にしろ、ないものを新たに造るということで、経済活性化の効果が高いのだ。

 「公共投資で、特に中国が注力しているのが鉄道です。高速道路は比較的整っているのですが、鉄道はまだまだ。昨年からは北京—上海間高速鉄道の工事が全面的に始まっています。また、大地震に見舞われた四川省の復興や、沿海部に比べて立ち遅れていた農村部のテコ入れなど、バランスよく配分されています」(日本アジア証券外国エクイティ部)


 「日本では累積財政赤字がGDPの約2倍あり国家財政に重くのしかかっていますが、中国の場合、20%程度にすぎず、今後も機動的、効果的に財政出動を打つことができると見込まれています」(田代氏)

 不況克服に向けた政府の強い姿勢を好感し、株式市場も大きく反応した格好だが、「3月以降の株価高騰は、実は短期資金の影響も大きい」(同)と指摘する。

 「昨年11月に4兆元の景気対策が打ち出されると、公共投資関連など、一部の銘柄が物色されるようになり、次いで金融相場を迎えました。つまり、金融緩和によるカネ余りが相場を押し上げた面も大きい。大幅な金融緩和によって、銀行の融資が増え、銀行から貸し出されたカネの一部が、株や不動産に流れたのです」

 買えば上がる、上がるから買う、という正の循環を生み出した金融緩和。大復活した中国株だが、そのほころびが徐々に表面化してきているのも事実だ。


戸松信博氏
グローバルリンクアドバイザーズ代表取締役。
中国やベトナムに詳しいテクニカルアナリスト。
著書に『「世界金融危機後」に狙う中国株』(角川SSC刊)など



田代尚機氏
TSチャイナリサーチ代表。
大和総研の中国株担当アナリスト、内藤証券などを経て独立。
著書に『レッド・センセーション好機到来!今こそ中国株』(角川SSC刊)など




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前身の金万証券から数え創業107年目の伝統。