【機関投資家編】希望観測による憶測記事がほとんど



たとえ、売り買いした本人から、いつ何を売買したか、特ダネを摑んでも、ウラを取るのは無理な話。

「『△株急落の要因は、有名仕手筋の〇〇が大量の空売りをしたため』なんて書いたら、下手をすれば、会社が損害賠償請求されちゃう。こうして結局は、特ダネもお蔵入りしてしまうのです」

市況ニュースが、基本は憶測記事なのは、こうした「オトナの事情」が複雑に絡み合ってのこと。

さらに、我々情報の受け手が注意しなければいけないのが、往々にしてその憶測が「希望的観測」なことだ。

「『影響は限定的』だとか限定的だったためしがないし、『調整』なんて単なる下落でしょ。『底打ち』だって、二番底があるかもしれない。こうして希望を匂わせるのは、記者からしてみれば、株価が上がらないと、市場参入者の投資意欲が落ち、自社媒体が売れなくなってしまうから。アナリストにしても、機関投資家からもらえる仕事が減ってしまいますしね」

さらに、震災後など、日本経済に大きなダメージを与える出来事があった場合には、記者側がネガティブな報道あえて「自粛」する傾向もあるという。

「これを書いたら、マーケットが壊れてしまうと感じたら、あえてその情報は書かないのが人情です」

なるほど、納得。櫻井氏から言わせれば、「株は本来放っておけば下がるもの」だとか。

「買いたいと思うのは、よっぽど上がると思える理由があるときだけ。一方、売りたいニーズは常にある。個人も機関投資家も、現金は常に手元に置いておきたいですからね。だから企業側は常に材料を出して、『買いたいニーズ』を喚起する必要がある。そして、それを支えるのが、記者による報道やアナリストのレポートなのです」

だからこそ、市況解説やレポートは、前向きなニュアンスのものが多いというわけだ。では、我々個人投資家は、こうした報道やレポートの表現を、どうすれば正しく見極められるのか?

「まず、基本姿勢としては、『それって本当?』と斜めに構えて読むこと。見極めポイントとしては、①横文字の多用、②期間を限定しない表現、③主語がない表現には、警戒したほうがいい」

①の横文字については、例えば「ドレッシング買いが入った」といった表現。

「横文字にすれば、高級感が高まり説得力が増す気がしますが、要は『機関投資家が期末だから買ってみた』ってことです」

②の期間が不明瞭な表現としては、「一時的」だとか「割安感」「調整」などが挙げられる。

「どれだけ一時的なのか、いつ、どこと比べて割安なのか、いつからいつまで調整しているのか、それによって意味がまったく異なる。表現をぼかすのは、書き手が予測に責任を取りたくないから」

主語がない文章もよく見かける。「様子見とか物色とか模様眺めだとか、一体誰がしてるのか(笑)」

櫻井氏は、「曖昧模糊とした表現は即ち、ウソ、ごまかしくらいに思っていい」と総括する。「情弱」なんて言葉じゃないけれど、情報を鵜呑みにするのが一番よくないということか。





櫻井英明 氏

ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。日興證券で運用担当者、インターネット証券の営業企画、「株式新聞Weekly」編集長を経て、’08年より現職。ラジオNIKKEIの出演などでも有名